KDDIは2017年5月18日、第5世代移動通信システム(5G)を使った実証実験を公開する報道関係者向け説明会を開いた。走行中のバスに搭載した車載端末へ仮想現実(VR)用の映像データなどを伝送するデモを披露。同社が5Gの活用例を公開するのは初めてだ。

KDDIの5Gの実証実験用のバス
KDDIの5Gの実証実験用のバス
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 5Gの周波数帯として28GHz帯を使用した。KDDI 技術統括本部 モバイル技術本部の松永彰シニア ディレクターは「28GHz帯は自動車や通行人などの障害物や周辺環境の影響を受けやすい。シミュレーション環境では検証できない課題などを実証実験で見つけて克服していきたい」と説明した。28GHz帯を使うと、木の葉の揺れなども通信品質に影響するという。

実証実験のために設置した高さ10メートルのアンテナ
実証実験のために設置した高さ10メートルのアンテナ
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 都内のKDDIビル付近に実証実験エリアを構築した。映像データを伝送するために高さ10メートルのアンテナを設置。アンテナの先端に合計4個の箱を取り付けている。1個の箱には64個のアンテナ素子を搭載している。

 電波を一方向に集中させて遠くまで飛ばす「ビームフォーミング」と呼ぶ技術を使った。アンテナに搭載されている4個の箱は、2個ずつセットにして、それぞれ2方向に向けた。アンテナから200メートルの範囲にある実証実験エリアをカバーできた。

 披露したデモは三つだ。まず、走行中のバスの車載端末に8Kの映像データを4本同時にストリーミング配信するデモだ。伝送速度は全ての映像データを合計して500M~600Mbpsだという。「高速に大容量のデータを伝送できる5Gの特性を生かした」(松永シニアディレクター)。

 二つめのデモは、VR用の映像データをバスの車載端末に向けて伝送した。VR用の映像は、バスの位置情報と連動させてHMD(ヘッド・マウント・ディスプレー)に投影。映像は、月面を探査する専用車からの視点でCGで作られており、走行するバスの動きに合わせて映像も動く。まるで月面を探査する専用車に乗っているような体験が可能だ。

走行中のバス内でVR映像をHMDに投影するデモも披露。HMDはGear VRを使用した
走行中のバス内でVR映像をHMDに投影するデモも披露。HMDはGear VRを使用した
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 最後のデモが、走行中のバスの車載端末で動画データをダウンロードする実証実験だ。動画データの容量の合計は500Mバイト。松永シニアディレクターは「伝送速度は3.5Gbpsで、1秒ほどでダウンロードできる」と説明する。LTEでは約130秒かかるという。

KDDI 技術統括本部 モバイル技術本部の松永彰シニア ディレクター
KDDI 技術統括本部 モバイル技術本部の松永彰シニア ディレクター
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