2017年5月18日、「富士通フォーラム2017」において、富士通の代表取締役の田中達也社長と執行役員常務CMOの阪井洋之氏が、ITを活用し顧客との新ビジネスを創出する「Digital Co-creation」について講演した。富士通の技術を農業、医薬、スポーツなどの分野で活用した事例を紹介した。

富士通代表取締役の田中達也社長
富士通代表取締役の田中達也社長
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 「私の考える、デジタルがもたらした一番の恩恵は『つながること』だ。組織の違い、業種の壁、物理的な距離を超え、データや知恵がつながっていく」と田中社長は述べる。

 農業分野におけるコラボレーションの事例として、富士通、苗床メーカーの増田採種場らが出資して静岡県磐田市に設立した「スマートアグリカルチャー磐田(以下、サークイワタ)」の取り組みを紹介した。

 サークイワタでは青汁などに使用される、機能性の高いケールなどを栽培している。「品種改良した機能性野菜は安定して栽培することが難しいとされるが、環境整備とICT技術により、初年度より安定生産できた」(増田採種場)という。

 富士通執行役員常務CMOの阪井洋之氏は、富士通の技術を医薬分野、スポーツ分野に応用する例などを紹介した。

 富士通の技術「Deep Tensor」(ディープテンソル)は、化合物のつながりなど、グラフ構造のデータに適応できる機械学習技術だ。同社のAI「Zinrai」のコア技術として、2017年度上期中の実用化を目指す。例えば新薬の開発の際に、医薬品の候補化合物を探索し、開発期間を短縮できるという。

 スポーツ分野では、日本体育協会とともに、富士通の3Dセンシング技術を活用した体操競技採点支援システムを開発する。選手の動きをリアルタイムに解析し、さまざまな角度から演技内容を確認することができる。「オリンピック・パラリンピックで使ってもらえるようにしたい」(阪井氏)。

 最後に、「パートナー企業と一緒になって、デジタル革新を実現していきたい」と田中社長は述べた。