総合人材サービス大手のアデコは2017年5月17日、AI(人工知能)がビジネスの現場に浸透する将来について、上場企業の管理職に「重要なスキル」などを尋ねたアンケート調査結果を公表。AI時代で重要なスキルに「対人関係力」「創造力」の二つがあるといった結果を得た。

 この調査は、今後AIの導入が進むと、ビジネスの現場でどのような変化が起こるのかを探るため、アデコが実施した。2017年4月、首都圏の上場企業に勤務する管理職を対象にインターネット調査を行い、40代から50代までの309人から回答を得た。

 将来重要になる能力については、「AIが一般化する2035年ごろのAI時代」に、ビジネスで重要な能力は何かを尋ねた。その結果、トップは対人関係力で55.0%、第2位が創造力の36.9%となった。

写真●「AI時代に重要なビジネス能力」に関するアンケート調査結果。現在5位の創造力は、2035年のAI時代は2位に浮上している
写真●「AI時代に重要なビジネス能力」に関するアンケート調査結果。現在5位の創造力は、2035年のAI時代は2位に浮上している
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 対人関係力は現在の重要な能力としてもトップだったが、創造力は現在の重要な能力としては第5位どまり。その創造力がAI時代には「分析的思考力・概念的思考力」「複雑な課題に愛する解決力」「積極性・主体性」を上回る重要スキルになるという見通しを、管理職は持っていることが明らかになった。

 AI時代になると、それまで人間が取り組んでいた仕事をAIに任せていく動きが出てくる一方で、人間である社員が付加価値の高い仕事にシフトしていくことが見込まれている。

 そんななかビジネスの現場では、これまで取り組んだことがない仕事や、仕事のやり方にチャレンジして成果を得ていくことが求められる。「ビジネスパーソンに創造力が強く求められてくると、管理職は考えているのではないか」と、調査を担当したアデコの土屋恵子取締役人事本部長は説明する。

写真●調査結果を説明するアデコの土屋恵子取締役人事本部長
写真●調査結果を説明するアデコの土屋恵子取締役人事本部長

 そのスキルを部下が習得するためのアプローチは、見直していく必要があることも、調査で見えてきた。

 現在、スキル習得のためにどんな社員教育を実施しているのかを管理職に尋ねたところ、最も多かったのが、「集合研修に参加させる」で75.7%。「スキルを習得できる実務を任せる」「上司からコーチングやフィードバックを与える」といった他のアプローチに比べて、20ポイント多い結果となった。

 これについて土屋取締役は、「ビジネスパーソンにとって、スキルを習得できる実務に当たったり、新しい経験ができる環境を与えられたりすることが、最も大きな成長機会になる。AI時代のスキルも、普段の仕事のなかで、習得できるようにしていきたい」と指摘する。

 調査では、管理職に「AIに対する期待感」も尋ねている。

写真●AIに対する期待感についての調査結果
写真●AIに対する期待感についての調査結果
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 その結果、期待していると答えた回答者は全体の88%。脅威に感じるという回答は12%にとどまった。「AIがどういった技術かといった理解が管理職のなかで進んでいるようだ。職場でAIと人間が共存して仕事を進めていき、効率化を高めたり、付加価値の高い成果を出したりできる。そういった期待を管理職は持っているのだろう」と、土屋取締役は分析する。