施工大手のダイダン(大阪市)は2017年5月17日、IoT(インターネットオブシングス)を活用したスマートビル制御システムの実証実験を開始した。センサーで取得した照度や温度などの環境情報と施設利用者の位置情報をクラウドに集約し、照明や空調を動的に制御するものである。「いまいる場所の照明と空調を、自分好みに自動で設定する」ことを可能にする。

ダイダンのショールームに設置したプロトタイプの概要
ダイダンのショールームに設置したプロトタイプの概要
(出所:ダイダン)
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プロトタイプのシステム構成
プロトタイプのシステム構成
(出所:電通国際情報サービス)
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 ダイダンの技術研究所(埼玉県入間市)のショールームに実証システムを設けた。実験は2017年5月17日から7月末まで実施し、システムの有用性と課題を検討し、今後の商用化へとつなげる。システム構築は、SIベンダーの電通国際情報サービス(iSiD)が手がけた。

自分好みの温度と明るさを建物に持ち込んで反映できる

 最大の特徴は、施設利用者の好みに合わせて空調や照明の出力を調整する仕組みを構築したこと。あらかじめスマートフォンアプリに温度と照度の好みを設定しておけば、該当エリアに入った際に、好みを反映して温度や照度が動的に変わる。スマートフォンの位置情報は、施設内でBeaconで取得する仕組みとした。

 データは、施設内ではなくクラウドで集約する仕組みとした。この狙いは、「別の建物に自分の好みを持ち込める」(ダイダンの技術研究所応用技術課で主管研究員を務める前園武氏)ことである。スマートフォンを持ち歩くだけで、現在地エリアの照明と空調を、自分好みに合わせられるようになる。

ダイダン 技術研究所 応用技術課 主管研究員 前園武氏
ダイダン 技術研究所 応用技術課 主管研究員 前園武氏
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電通国際情報サービス コミュニケーションIT事業部 ビジネス系ユニット ソーシャルテクノロジー開発部 松島宏明氏
電通国際情報サービス コミュニケーションIT事業部 ビジネス系ユニット ソーシャルテクノロジー開発部 松島宏明氏
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 好みの設定は、スマートフォンアプリ上で、照明が「眩しい」「暗い」、温度が「暑い」「寒い」という指示を、音声やタッチパネルで随時入力して行う、というもの。暑いと感じたら暑いと入力し、暗いと感じたら暗いと入力する。これを繰り返すことによって、結果として現時点での自分の好みが、温度の値や照明の値(3段階)として記録される。

 実験システムでは、好みが異なる複数の人が混在する状況は考慮していない。最初にエリアに入った人がエリアから出ていくまで、最初にエリアに入った人の好みの設定が継続する。施設内でのスマートフォンの位置情報はBeaconで調べ、5秒間隔で取得する。

既成の市販品だけで2カ月で構築

 市販の機器だけでシステムを構成した点も特徴である。この意義について、電通国際情報サービスでコミュニケーションIT事業部ビジネス系ユニットソーシャルテクノロジー開発部に在籍する松島宏明氏は「プロトタイプを商用サービス化して実際に建物に導入することを考えると、市販の機器や既存のサービスを組み合わせるだけで実現できることが重要」と説明する。

 システムは大きく、Beaconで接続できる温度と照度のセンサー、クラウド上のアプリケーション、照明機器や空調機器を制御するPLC(プログラマブルロジックコントローラ)、クラウドと現場システムをつなぐ各種ゲートウエイサーバー、などで構成する。これらのすべてに既製の市販品を使ったとしている。さらに、要素間の通信は無線で行うことで、システムを簡素化・標準化した。

 市販品や既製品の活用によって、プロトタイプの構築期間は2カ月と短く済んだとしている。