ローソンの玉塚元一会長は2017年5月15日、ハーツユナイテッドグループ(HUG)の社長就任に当たって会見した。HUGの主力事業であるソフトウエアデバッグ市場を、サーフィンに適した波立っている海に例えて「大きな成長戦略を描ける市場」と説明。デバッグ技術者の人材マネジメント、サービス体系化、営業力強化の3本柱に取り組む。

HUG社長就任の一報で株価は下げたが、ローソン在籍期間で株価を倍にした実績を挙げ、「当初の期待値は低い方がありがたい。成果を出せば株価はついてくる」と強気を示した
HUG社長就任の一報で株価は下げたが、ローソン在籍期間で株価を倍にした実績を挙げ、「当初の期待値は低い方がありがたい。成果を出せば株価はついてくる」と強気を示した
[画像のクリックで拡大表示]

 「(HUGの社長を引き受けるという)意思決定をしたのはこの1~2カ月のこと。小売りからもお誘いがあったが、ローソンに迷惑をかけたくなかったので、関わる業界を大きく変えようと思った」。玉塚氏はコンビニエンスストアからIT業界へと転じた背景をこう語った。HUGの宮澤栄一社長CEO(最高経営責任者)と出会ったのはおよそ半年前。「いろんな大人を見てきたが、会った瞬間に衝撃を受けた」という宮澤社長が玉塚氏を口説き落とす形で、社長就任が決まった。

 2001年創業のHUGは連結売上高150億円の7割強をデバッグ事業が占める。家庭用ゲームソフト、携帯電話やスマートフォンのアプリ、家電や車載器の組み込みソフトなどが対象だ。8000人のデバッグ技術者を抱える。

 「商売は事業性がある領域でやることが大切。波が立っている海でないとサーフィンはできないのと同じだ」。玉塚氏はHUGの事業性をこう表現した。IoT(インターネット・オブ・シングズ)や人工知能(AI)といったITを使って新規事業を創出するデジタルビジネスが広がり、「ゲーム以外の領域から引き合いがどんどん来ている。PCから家庭向けゲーム機、携帯電話、スマホなど「あらゆる機器のソフトを検査してきたノウハウ、人材、知恵が、さらに有効活用することで大きな成長戦略を描ける」(同)。

「経営者として豊富な経験を持つ玉塚氏に当社の第2創業を担ってもらう」と話すHUG宮澤社長(左)
「経営者として豊富な経験を持つ玉塚氏に当社の第2創業を担ってもらう」と話すHUG宮澤社長(左)
[画像のクリックで拡大表示]

 今後は玉塚氏が主に経営面の構造改革を、宮澤社長が事業の強化や開発をそれぞれ担う。玉塚氏は注力分野として人材マネジメント、サービスの体系化、営業力の強化を挙げた。

 人材については育成プログラムや採用の強化に取り組む。サービスに関しては企業のIoTシステムやAIシステムを対象にしたデバッグ事業を拡充する。積極的なM&A(合併・買収)もしかける意向だ。現状は「ゼロ」という営業組織についても、「既に私のリソースを使って、かなり強い販売チームを育成しつつある」(玉塚氏)。

 構造改革については「時間軸がものすごく重要」(同)。1年後をめどに「かなり高い目標」(同)を設定し、改革に取り組む。