「Windowsは全てのデバイスを愛している」――。米Microsoftは2017年5月11日(米国時間)、開催中の開発者会議「Microsoft Build 2017」でモバイルデバイスに関する新しい戦略を打ち出した。ここでいうデバイスとは「iOS」や「Android」を搭載する機器のこと。WindowsとiOS、Androidをまたいで「コピー&ペースト」ができる仕組みなどを2017年秋に提供する(写真1)。

写真1●Microsoft Build 2017でのメッセージ
写真1●Microsoft Build 2017でのメッセージ
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 Microsoftは同日、2017年秋に「Windows 10」の次期大型アップデートである「Fall Creators Update」を提供すると発表した。このアップデートに合わせて、Microsoftが提供するWindowsや同社のクラウドサービスを連携する仕組みである「Microsoft Graph」の機能を拡張し、WindowsとiOSやAndroidの連携を強化する。

 例えば、WindowsとiOS、Androidとをまたがって、ファイル編集やWeb閲覧などの作業を続けられるようにする。MicrosoftはWindows 10 Fall Creators Updateに搭載する「Timeline」という機能で、ユーザーによるコンピュータ上での作業内容を全て記録し、後から作業内容を振り返ったり、その時に使用していたファイルの利用を再開したりするといったことを可能にする予定だ。

 さらにiOSやAndroidにMicrosoftのデジタルアシスタント「Cortana」をインストールすると、このTimelineの機能をiOSやAndroid上でも利用できるようになる。これによってユーザーは、モバイルデバイス上で編集していた文書ファイルをWindows 10で続けて編集したり、Windows 10上で閲覧していたWebサイトをモバイルデバイス上で続けて閲覧したりできるようになる。

 WindowsとiOS、Androidの間で「クリップボード」を共有できるようにもなる。Windows 10上で利用するアプリケーションでテキストや画像などをコピーすると、それをiOSやAndroidのアプリケーションにペーストできるようになる。

.NETとXAMLでクロスプラットフォーム開発

 アプリケーション開発に関してもWindowsとiOS、Androidの垣根を無くす方向に動く。Microsoftは2016年2月に米Xamarinを買収し、iOSやAndroidのアプリケーションをMicrosoftの「.NET」の技術を使って開発できるようにしていた。

 今回さらに、.NETにおけるUI(ユーザーインタフェース)のマークアップ言語である「XAML」の仕様をWindowsの「UWP(Universal Windows Platform)」アプリケーションやiOSアプリ、Androidアプリで共通化すると発表した。新仕様の名称は「XAML Standard」である。これによってアプリケーション開発者は、Windows、iOS、AndroidのアプリケーションのUIをXAMLによって開発できるようになった(写真2)。

写真2●.NETとXAMLをクロスプラットフォームで利用可能にする
写真2●.NETとXAMLをクロスプラットフォームで利用可能にする
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 Microsoftは「モバイルファースト&クラウドファースト」を戦略として掲げているが、自社のモバイルデバイスである「Windows Phone」は極めて苦戦している。モバイルファーストを実現する戦略として、自社デバイスに頼るのではなくiOSとAndroidをWindowsと連携させるという現実路線に舵を切った。