富士通は2017年5月9日、製造業のデジタル化を支援するサービス基盤「COLMINA(COLlaborative MONOZUKURI Innovation Agent)」を2017年7月から順次販売すると発表した。設計、原材料調達、生産、保守・運用、販売など製造業の一連のプロセス(サプライチェーン)において、AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングス)を活用したサービスやソフトを提供する。

 工場内における生産性の向上や故障予測などのリスク管理に加えて、会社全体を横断して製造に関する情報を見える化・活用する。数値目標としては、2020年度に「COLMINA」関連ビジネスで売り上げを2000億円にすることを掲げる。

富士通 産業・流通システム事業本部長の東純一執行役員
富士通 産業・流通システム事業本部長の東純一執行役員
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 「日本のモノづくりを支援する場として、COLMINAを提供する」と富士通の産業・流通システム事業本部長の東純一執行役員は述べる。「COLMINA」は「エッジ」、「プラットフォーム」、「サービス」の3つで構成される。

「FUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA(COLMINA)」の体系図
「FUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA(COLMINA)」の体系図
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 「エッジ」は、生産現場における生産設備や各種センサーのデータを収集し最適なフォーマットへの変換を行い、「プラットフォーム」にデータを集約する機能だ。富士通もハードウエアを提供するが、他社のハードウエアからもデータを集めることができる。

 「プラットフォーム」は、富士通の提供するクラウド上で、データの蓄積・分析をする仕組み。「エッジ」で取得した工場の生産設備や従業員に関するデータに加え、資材の調達や製品の物流などのデータも連携させ、「複数工場の見える化」も図る。富士通の持つIoTやAI、ビックデータ技術を搭載している。

 「サービス」は、設計から製造・保守までの一連の業務を支援するアプリケーション。「プラットフォーム」で分析した情報に基づき、生産性の向上や効率化などを促進する。具体的には、設計情報の管理や製造状況の可視化、故障予測など25種を2017年7月から提供し、順次増やして最終的に150種のサービスを提供する予定だという。

 顧客はこれらのうち必要なものを選択し、企業の規模によってサービスやソフトの提供形態も柔軟に変更できる。

 富士通は将来的にCOLMINAが提供する価値として、「ノウハウ提供の場」を挙げる。「COLMINAを通じて、各企業の製造プロセスにおけるノウハウを統合することが可能だ。日本の企業はモノづくりのノウハウが多く蓄積されているが、自社の工場内にとどまっているものも多い。企業の枠を超え全体を強化しなければ、日本の製造業は生き残れない」と東執行役員は述べる。

 COLMINAの提供するサービスには、富士通が長年培ってきたノウハウが活用されているという。たとえば設計のバーチャル化による開発の高速化だ。製品開発の工程では通常試作品をつくり、何度も強度や耐熱性の試験を行うが、富士通はコンピュータ上で強度や耐熱性の解析を行うことで、工程を効率化してきた。この技術を、COLMINAでは「デジタルモックアップ」というサービスとして提供する。「『日本のモノづくり全体を強くしたい』という思いを持つ企業は多い」(東執行役員)とし、富士通以外の企業が持つノウハウもCOLMINA経由で共有することを目指す。

 COLMINAサービス、COLMINAプラットフォームは2017年7月より、COLMINAエッジは2017年下期より提供開始予定。販売価格は個別見積もり。