米Dell Technologiesは2017年5月8日(米国時間)、サーバーやストレージなどを従量課金で利用できる「コンサンプションモデル」と呼ぶ新制度や、第14世代の「PowerEdge」PCサーバーなどを発表した。同社は同日から米ラスベガスでカンファレンス「Dell EMC World」を開催している。

 「Dell EMC World」は昨年まで「EMC World」の名称で開催されていたイベント。Dellによる米EMCの買収が2016年に完了したため、今回から新しい名称になった。EMCの買収によってITインフラストラクチャー市場で最大級のメーカーになったDellだが、同市場では「Amazon Web Services」や「Microsoft Azure」などのクラウドの伸長が著しい。Michael Dell会長兼CEO(写真1)は基調講演で「ITインフラストラクチャーに対する設備投資(CAPEX)を費用(OPEX)へと変えるコンサンプション(消費型)モデルをデータセンターレベルで提供する」と語り、支払方式の利便性を高めることでクラウドに対抗する姿勢を明らかにした。

写真1●米Dell TechnologiesのMichael Dell会長兼CEO
写真1●米Dell TechnologiesのMichael Dell会長兼CEO
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1年が経てば解約も可能

 今回Dellが発表したコンサンプションモデルは3種類ある。「Cloud Flex for HCI」は同社が「ハイパー・コンバージド・インフラストラクチャー(HCI)」と呼ぶ「VxRail」や「XC」シリーズ向けの制度で、初期投資の必要ない月額課金で製品を提供する。料金は利用期間に応じて値下げするほか、利用開始から1年が経てば自由に解約できるようにした。クラウド事業者は利用量に基づく割引をしたり、料金の値下げを実施したりしている。導入しやすい料金体系の採用でクラウド事業者に対抗し、HCIの拡販を図る。

 ストレージ装置を対象にした「Flex on Demand」は、使用するストレージの容量に応じて料金を支払う。ユーザー企業はあらかじめ多めのストレージ容量を用意しておく「オーバープロビジョニング」に関する支出を負担しなくて済むようになる。ストレージ容量は後から変更が可能だ。デスクトップ仮想化(VDI)に必要なITインフラストラクチャーを、VDIクライアント1台ごとの従量課金で提供する「PC as a Service」もある。

 PCサーバー「PowerEdge」は2014年以来のモデルチェンジで、第14世代になった。DellはEMCの買収後にITインフラストラクチャー製品のブランドを「Dell EMC」に変更している。そのためPowerEdgeの筐体前面にあるロゴも「Dell EMC」のものになった(写真2)。米Intelが2017年夏に出荷する予定の「Xeon」プロセッサの新製品を搭載する予定であるほか、フラッシュメモリーの搭載容量を全世代に比べて最大19倍に増やした。Dell EMCブランドで販売するストレージ装置やHCI製品のハードウエアも今後、第14世代PowerEdgeベースになる。

写真2●第14世代PowerEdgeを発表するDell EMC部門のPresidentであるDavid Goulden氏
写真2●第14世代PowerEdgeを発表するDell EMC部門のPresidentであるDavid Goulden氏
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 オール・フラッシュ・ストレージに関しては、ハイエンド製品の「VMAX 950F」、VDIに向いた「XtremIO X2」、ミドルレンジ製品の「Unity」、ハードディスクとのハイブリッド製品「SC5020」、スケールアウトNASである「Isilon」の新製品をそれぞれ発表している。Dellは近年、HCIなどPCサーバーの内蔵ストレージだけを使用する「ソフトウエア・デファインド・ストレージ」の品揃えを増やしている。Dell EMC部門のPresidentであるDavid Goulden氏はインタビューで「ソフトウエアデファインドには力を入れており、HCIでカバーできる領域は今後も増える」との見通しを語る一方で「ハイエンド製品であるVMAXは、今後もソフトウエアデファインドにはならないだろう」と述べた。

研究開発費は年間45億ドル

 Dellはかつて、「業界標準のハードウエアとソフトウエアからなる製品を他社より安く販売する」ことに専念し、研究開発に資金を投じずにコスト削減を図る「デルモデル」を標榜していたが、EMC買収後は研究開発費も増加している。Dell氏は基調講演で「年間の研究開発費は45億ドルに達する」と強調した。Goulden氏もインタビューで「45億ドルの半分がITインフラストラクチャー分野への投資であり、他社の投資額に比べても大きい」と主張した。EMC買収後に社名をDell Technologiesへと変更した同社が、テクノロジー強化路線を突き進んでいる。