日立製作所は2017年5月9日、ブロックチェーン技術の検証環境「Blockchain PoC環境提供サービス」を販売開始した。オープンソースの分散台帳フレームワーク「Hyperledger Fabric」をベースに、ブロックチェーン技術を使ったアプリ開発や適用可能性の検証などを行える。システム検証に向けた同社クラウドサービス「Lumadaコンピテンシーセンター」のメニューに加える。利用料金は初期費用が20万円から、月額費用が30万円から。

 サプライチェーン分野でのブロックチェーン技術の活用促進に向けて、トレーサビリティ管理システムのプロトタイプを開発した。日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部 シニアテクノロジーエバンジェリストの中村輝雄氏は「ブロックチェーンをどう使ったらよいか分からないという顧客は少なくない。実際に動くプロトタイプで利点を感じ、PoC環境で自ら触って、活用を進めてほしい」と狙いを話す。

 プロトタイプは、自動車メーカーと部品メーカーを結ぶサプライチェーンで、製品販売、部品や材料調達などの情報をブロックチェーン技術で管理する。自動車メーカー(セットメーカー)と部品メーカー(Tier1)、その先の部品メーカー(Tier2)間の発注/受注の情報を、EDIアプリを通じてそれぞれのデータベース(DB)に記録。これらDBを同期し、トレーサビリティを管理する。共有DBでも同様の仕組みは作れるが、改ざんリスクやデータ項目を統一する手間といった課題がある。「ブロックチェーン技術ならば、メーカーが互いにデータの正しさを証明できるし、オープンなプラットフォームなので参加しやすい」(中村氏)。プロトタイプは画面周りをNode.jsで、DBの同期処理などをGo言語で開発した。

ブロックチェーン技術でメーカー間のDBを同期
ブロックチェーン技術でメーカー間のDBを同期
(出所:日立製作所)
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 デモシナリオは、ある部品の不具合による自動車のリコール処理を想定。セットメーカはトレーサビリティ管理システムを使い、販売店が登録したクレーム情報から、不具合が疑われる部品カテゴリを特定。このカテゴリに属する部品を製造元であるTier1やTier2の登録情報から洗い出す。調査により不具合部品を突き止めたセットメーカは、該当部品を組み込んだ車種を検索し、顧客に対しリコールを案内する。

トレーサビリティ管理システムにより不具合部品を特定
トレーサビリティ管理システムにより不具合部品を特定
(出所:日立製作所)
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 プロトタイプ開発でサプライチェーン分野を選んだのは、同社顧客にブロックチェーン技術を広める狙いもある。同社のWEB-EDIサービス「TWX-21」は「バイヤー1000社、サプライヤー5万9000社、合計6万社の利用実績がある」(中村氏)。今回開発したトレーサビリティ管理システムを、将来はTWX-21でオプション提供する考えだ。