NECと京セラコミュニケーションシステム(KCCS)、ガス事業に関連したソフトウエア開発などを手掛けるミツウロコクリエイティブソリューションズは2017年5月8日、IoT(インターネット・オブ・シングズ)と人工知能(AI)技術を使って、LP(液化石油)ガス配送業務の効率化に向けたサービスを開発すると発表した。ガスメーターの指針データをIoTでクラウドへ送信し、取得したデータをAIで分析して、LPガスの供給計画や配送ルートを提案する。2018年度の事業開始に向けて、2017年度内にも実証を開始する予定だ。
今回3社が開発するサービスでは、ガスメーターにNEC の「LPWA 対応 IoT 無線化ユニット」を設置して1日に1~2回指針データを取得する。データはKCCSが提供するIoT向け通信サービス「SIGFOX」を活用し、基地局経由でNEC のクラウドIoT 基盤「NEC the WISE IoT Platform」上に収集・蓄積していく。NECのAI「NEC the WISE」を活⽤して、LP ガス容器の最適な配送⽇と効率的な配送ルートを策定する。
従来の配送サイクルでは、複数設置しているLPガス容器のうち一つが空になれば満充填した容器と交換していたが、他の容器にガスが十分残っている状態で交換するのは効率が悪い。今回のIoTサービスを活用すれば1日ごとの正確なガス残量が分かるので、まとめて複数本の容器を交換できる。結果として配送の頻度が減るので、配送のコスト削減が期待できる。導入コストはNEC製のユニットとクラウド利用料だけですむため、従来の人件費とほぼ同等に抑えられる見込みという。
LPガスはスマートメーターなどで使用量を把握するのが難しい。従来から無線ネットワークを活用してガス残量を把握する試みは検討されていたが、通信コストがかさむため普及が進んでいなかった。そのためLPガスは大半が人手による検針で管理しており、その検針データから個々の配送事業者が経験に基づいて残量を予測し、効率的な配送ルートを割り出していた。検針員の人手不足や配送の非効率さが課題になっていた。
ミツウロコクリエイティブソリューションズ ミツウロコ事務センター長 兼 統括部長の永沼敬 取締役は、「LPガスの配送をIoTで効率化する取り組みは国内初だ」と語る。今後、同社らはミツウロコグループ内でサービスを活用し、AIアルゴリズムのチューニングを施していく。最適なアルゴリズムを開発したあとは、全国のLPガス販売・配送事業者向けにサービスを展開していく考えだ。
将来に向けた取り組みとしては、検針データからさまざまなデータを収集し利活用することも考えられる。ガスメーターでは流量区分から、暖房や給湯といったように何の用途にガスを利用したかが把握できる。エネルギーマネージメントのニーズがあれば、検針データからこうした情報も提供可能だ。
ミツウロコグループとNECは2015年ごろから低消費電力と長距離伝送が特徴のネットワーク技術であるLPWA(ローパワー・ワイドエリア)を活用した自動検針サービスを検討し始めた。KCCSがLPWAの一種である「SIGFOX」通信サービスを提供開始するのを受け、3社は2016年末ごろから協議を重ねて今回の協業に至ったという。