日本航空(JAL)は2017年4月28日、2020年度を目標年度とする中期経営計画を発表した。ANAホールディングス(ANAHD)も同日、2016~20年度の予定で進行中の中期経営計画の改訂版を発表した。両社とも、ITを活用して新たな事業領域の開拓を進め増収につなげる姿勢を示している。

中期経営計画を発表する(左から)JALの植木義晴社長、ANAHDの芝田浩二上席執行役員
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中期経営計画を発表する(左から)JALの植木義晴社長、ANAHDの芝田浩二上席執行役員
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中期経営計画を発表する(左から)JALの植木義晴社長、ANAHDの芝田浩二上席執行役員

JAL、800億円投じ旅客システムを11月刷新

 JALの中計では、乗客の予約管理などを担う旅客系システムを2017年11月をめどにスペインのアマデウスが提供するクラウドサービスに移行する。投資総額は800億円で「海外地区のWebサイトで予約などの使い勝手を改善し、海外におけるプレゼンス向上につなげていく」(西尾忠男常務執行役員)とする。

 加えて、2017年2月から進める国内線の機内無線LANの無料化などで「一歩先行く新しい機内環境を提供する」(西尾常務)ほか、整備部門でもITを活用した作業効率の改善を進める。

 本業の航空輸送事業以外では、売上高を2017年3月期の約3000億円から2020年度に4000億円に引き上げる方針を表明。引き上げ幅の1000億円のうち500億円はグランドハンドリング、他社からの整備受託、クレジットカードといった既存事業の上積みで実現し、残りの500億円を新規事業で創出する。

 新規事業についてJALは「例えば当社の高品質な(接客などの)ソフトの部分を、ITを活用して他の航空会社に提供するなどしたい」(同)とする。運航時の気象予測や機体整備などでビッグデータを活用するほか、「人工知能(AI)の分野でも先行的にお金を使う」(同)計画だ。

ANA、新設子会社でマイレージ会員へのマーケティング強化

 ANAHDは「マイレージ会員情報とICT基盤を掛け合わせて新事業を作る」(芝田浩二上席執行役員)と表明。同社は顧客マーケティング部門の戦略子会社としてANA Xを2016年10月に設立しており、同社で「クレジットカード『ANAカード』の保有者に関する嗜好などのデータを、航空以外の領域にどう生かせるか、データベースマーケティングに取り組んでいきたい」(グループ経営戦略室経営企画部の峯口秀喜部長)とした。

 ANAHDは2017年4月にピーチ・アビエーションを連結子会社化した。「ピーチは関西圏や台湾の消費者から好意的に見ていただいている。そうした顧客のデータをいろいろな形で生かしていきたい」(同)。

 ANAHDの航空輸送事業以外の売上高は、2018年3月期計画で4000億円強で、ANAHDの連結売上高の約2割を占める。マーケティングの強化により「航空輸送事業以外の売上高をできるだけ大きくしていきたい」(同)とした。