NECは2017年4月27日、2017年3月期の通期決算を発表した。売上高は前年同期比5.7%減の2兆6650億円、営業利益は同54.2%減の418億円で減収減益となった。成長のエンジンと位置付ける海外事業での不振に加え、円高の影響や既存事業の需要減などが悪影響を及ぼした。業績悪化を受けて2019年3月期を最終年度とする現中期経営計画について事実上の撤回を表明した。中期経営計画を撤回するのは、東日本大震災やタイの洪水などの影響を受けた2010~2012年度の中期経営計画以来になるという。

 セグメント別に業績を見ると、官公庁や公共向けの「パブリック」セグメントや、通信事業者向けの「テレコムキャリア」セグメント、「システムプラットフォーム」セグメントが減収減益と軒並み不調だった。一方、製造業や流通業向けの「エンタープライズ」セグメントは比較的好調に推移した。

 パブリックセグメントでは、第4四半期から日本航空電子工業の連結子会社化がプラス要因となったものの、防災関連の公共向け事業の受注減少を受けて、売上高が前年同期比4.6%減の7360億円、営業利益が同113億円減の460億円の減収減益となった。

 テレコムキャリアセグメントでも、通信事業者の投資が停滞したことや円高などの影響を受けて、売上高が前年同期比12.3%減の6116億円、営業利益が同271億円減の195億円の減収減益となった。システムプラットフォームセグメントは、ハードウエアや企業ネットワーク関連の事業が減少したことで、売上高が前年同期比1.2%減の7198億円、営業利益が同23億円減の294億円の減収減益だった。

 一方、エンタープライズセグメントでは製造業向け事業が堅調に推移したことで、売上高が前年同期比2.0%増の3063億円、営業利益が同0%減の239億円と増収した。

中期経営計画の撤回に新野社長「残念」

 「思うように成果が出ず、非常に残念な結果になった」。NECの新野隆 社長兼CEO(最高経営責任者)は会見の席で悔しさをにじませた。現中期経営計画の初年度だった2016年度に、成長を期待していた海外市場において「セーフティ」、「グローバルキャリア向けネットワーク」、「リテール向けITサービス」の注力3事業で立ち上げが遅れ、目標を大きく下回った。

NECの新野隆 社長兼CEO(最高経営責任者)
NECの新野隆 社長兼CEO(最高経営責任者)
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 国内市場でもパブリックやテレコムキャリアなどの事業で、採算性や収益性が悪化した。新たな不採算案件が発生したことも足を引っ張った。同社が2017年2月に、公正取引委員会から排除措置命令と課徴金の納付命令を受けたことで2016年度の決算に影響が出たという。2017年度は指名停止に伴う損失を見込む。

 現行の中期経営計画では売上高3兆円、営業利益1500億円を目標にしていたが、初年度の業績悪化を受けて2018年度から新たな中期経営計画を策定する。新中期経営計画では営業利益率の目標を5%に設定し、「なるべく早期に達成する」(新野氏)という。具体的な目標事項については2018年1月をメドに策定する予定だ。国内事業の収益性を改善すると共に、海外では注力する3事業に加えて成長のために新たな施策に取り組む方針という。

 2018年3月期の通期決算予想では、売上高が前年同期比5.1%増の2兆8000億円、営業利益は同19.5%増の500億円の増収増益を見込む。指名停止の影響から600億円の減収となるものの、日本航空電子工業の連結子会社化の要因で1800億円の増収効果が見込めることから、結果的に上振れすると見る。