NTTデータと東京海上日動火災保険は2017年4月24日、ブロックチェーンを使って保険証券を電子化する実証実験が完了したと発表した。利用できるセキュリティレベルが確認できたため、実運用に向けてコンソーシアムを設立する。

 保険証券を電子化する実証実験は、NTTデータがオリックス銀行らと2016年に実施した貿易金融の「信用状」を電子化する実証実験を基にしたもの。銀行が発行する支払いの確約書である信用状と保険内容を保証する保険証券など、保険契約に必要なデータが全て電子化することで契約手続きや内容確認といった業務が自動化できる。現在は紙の保険証券に記載された保険条件や対象貨物といった項目が、信用状と一致しているかを目視で確認している。

 実証実験には認証を得た事業者だけがデータを共有するコンソーシアム型のブロックチェーン「イーサリアム(Ethereum)」を使った。Amazon Web Services(AWS)の東京リージョンに保険証券のデータを保存するサーバーを3台用意し、保険証券のデータが改変されずに通信できるか、もし改変された時に検知できるかを検証した。

 保険証券を電子化する取り組みはこれまでもあったが、「証券データの改変リスクがあって難しかった」(東京海上日動火災保険)。輸出入の保険証券は物品を売買する企業のほかに輸送業者など複数の関係者が介在するため、データ改変のおそれがないシステムを構築することが課題だった。ブロックチェーンを使えば、複数の事業者が参加してもデータ改変ができないシステムを安価に構築できるという。

 NTTデータはシステムの実運用に向けて、貿易業界関係者が参加するコンソーシアムの設立を目指す。ブロックチェーンを使ったシステムでは関係する企業がそれぞれのサーバー上で同じ取引履歴を保存するため、データ形式の統一が必要だからだ。東京海上日動はNTTデータが設立を目指すコンソーシアムへの参画を検討している。