パナソニックは2017年4月19日、イノベーション推進のための研究開発(R&D)戦略を説明した。「全社テーマの考え方の導入」と「ビジネスイノベーション本部の新設」が2つの大きな柱。ビジネスイノベーション本部の本部長には宮部義幸代表取締役専務が、副本部長にはSAPで企業のデジタル戦略策定などを手掛けた馬場渉氏が就任した。

ビジネスイノベーション本部の本部長に就任した宮部義幸代表取締役専務
ビジネスイノベーション本部の本部長に就任した宮部義幸代表取締役専務
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 「ありとあらゆるモノがつながっていくIoTの時代は、デバイスを提供している私たちにとって大きなチャンスととらえている」と宮部氏は強調。一方、米国・シリコンバレーに活動拠点を置く馬場氏は、「パナソニックは本格的にイノベーション戦略に舵を切った企業。起業家精神あふれる大企業を日本でつくってみたいという思いから移籍に至った」という。

ビジネスイノベーション本部の馬場渉副本部長。パナソニックノースアメリカの副社長を兼務する
ビジネスイノベーション本部の馬場渉副本部長。パナソニックノースアメリカの副社長を兼務する
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 R&D戦略の2本柱のうち、一つめの「全社テーマの考え方の導入」は、複数カンパニーの連携が必要である事業や、既存事業に対する破壊的技術に基づく事業のうち、今後成長が見込める事業を「全社テーマ」に設定し、本社主導でイノベーションを推進していく取り組み。宮部本部長は、想定する全社テーマの内容については明言しなかったものの、「5年ないし10年かかるにせよ、数100億円以上の規模のビジネスになるものを全社テーマとして設定したい。近日中に2つの全社テーマを決める予定」と述べた。

 もう一つの柱である「ビジネスイノベーション本部」は、2017年4月1日付で新設した組織。「プロジェクト推進室」「IoT事業推進室」「AIソリューションセンター」の3部署からなる。サービスを中心とした、IoT技術・AI技術に基づく新規事業創出を目指す。

 同本部のプロジェクト推進室は、サービス中心の新規事業の起案・推進のほか、若手育成プログラム「NEO」(Next Entrepreneurs Opportunity)を運営する。「イノベーターがいないところにイノベーションは起きない」(馬場氏)とし、起業家に近い意欲や能力をもつ人材を育てることに力を入れていく。

 またAI強化への取り組みとして、大阪大学と共同講座を設置することによる社内技術者の育成に加え、新卒採用で約20から30人の「AI特別枠」を新たに設けるなど、技術者を増強する。「3年後には現在の2~3倍にあたる300人規模、5年以内には1000名程度規模のAIスペシャリストを社内に抱えたい」(宮部氏)。

 同社は自動運転・コミュータや、AIロボティクス家電などのIoT/ロボティクス領域、車載用エネルギーソリューションなどのエネルギー領域に力を入れる。「新しい時代を作っていきたい」と宮部本部長は述べた。