クラウドソーシングサービスを手掛けるランサーズは2017年4月19日、東京・渋谷の拠点で、事業戦略発表会を開催。新しい事業戦略と、新事業の立ち上げを発表した。

写真●ランサーズの秋好陽介代表取締役社長
写真●ランサーズの秋好陽介代表取締役社長
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 ランサーズの秋好陽介代表取締役社長によると、2008年創業の同社は、これまで「時間と場所にとらわれない働き方の実現」を経営方針にしてきたという。その方針に基づき、企業がネットを介して個人のフリーランサーに仕事を依頼できるクラウドソーシング事業を推進してきた。これまで約150万件の仕事を取り扱う実績を積み、2016年度は21億円の売り上げを達成した。

 今後の成長戦略について秋好社長は、「政府の働き方改革など社会の流れもあり、これからは、視野をもっと広げて、テクノロジーを駆使することで、誰もが自分らしく働ける社会を作ることを目指す」と、説明した。同社はこの新しい成長戦略を「オープン・タレント・プラットフォーム」と名付けている。

 この新戦略の発表に合わせて新しいサービスの立ち上げも明らかにした。2017年夏に、高い専門スキルを持つフリーランサーに仕事を紹介するサービス「Lancers Top」の提供を開始する。2017年6月に個人がスマートフォンを使って、フリーランサーに仕事を依頼できるサービス「pook(プック)」のベータ版を開始すると明らかにした。

 Lancers Topは、トップレベルの専門スキルを持つフリーランサーを対象に、レベルの高い仕事を紹介するサービス。従来のクラウドソーシングサービスとは異なり、フリーランサーがこのサービスに登録する際、実名が前提で、事前審査も実施する。保有するスキルを見える化し、面談もすることで、仕事を依頼する企業への信頼度を高める。登録したフリーランサーへ仕事を依頼する際には、最低報酬額も設定する予定だ。

 pookでは、個人がフリーランサーに、IT以外の仕事を含めて依頼できるようにする。これまでのクラウドソーシングサービスは、企業が個人のフリーランサーに、IT関連の仕事を依頼するものだったが、個人からの依頼を受け付けるようにする。

 仕事は、スポーツのインストラクション、メイクやネイルアートといった美容・ファッション、整体やマッサージなどの健康、カウンセリング、家事代行、語学講師や撮影・映像制作など10ジャンル、70以上を依頼できるようにしていく。

 個人が仕事を依頼しやすくするため、専用のスマートフォンアプリを開発して、条件に見合うフリーランサーを探せるようにしたり、フリーランサーがどんな経歴を持っているのか分かるようプロフィールを充実させたりする。

 仕事を依頼するフリーランサーが決まり、仕事をする日時や場所、予算などで折り合いがついたあとのスマホ機能も充実させる。

写真●pookのスマホアプリの画面例
写真●pookのスマホアプリの画面例
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 スマホの位置情報を使うことで、「フリーランサーが仕事の場所に向かっているかどうか」を、依頼した個人が持つスマホ上の地図から分かるようにする。「約束した場所に時間通りに来ないのでは」という仕事を依頼した個人の不安を払しょくする。Lancers Topとpookでは、2017年4月19日から、フリーランサーの事前登録の受け付けを始めた。

 このほか、ランサーズはデジタルマーケティング事業の新会社「QUANT」の設立を発表。仕事とフリーランサーのマッチング精度を高めるAI(人工知能)の活用で京都大学と産学連携することも明らかにした。一連の取り組みで、10万人以上が新たにクラウドソーシングを利用することを目指す。