経済産業省と大手コンビニエンスストア5社は2025年をめどに、国内全店舗で扱う全商品に、RFID技術を使ったICタグを導入する方針を固めた。2017年4月18日にも公表する予定。レジ業務を効率化すると共に、販売情報などをメーカーや物流業者と共有してサプライチェーンを最適化する仕組みづくりを目指す。

 「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を共同で発表する。セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズの店頭商品すべてに、ICタグを導入する旨を記載。現在は1枚10円程度のICタグが1円以下になること、ICタグの貼り付け作業は人手ではなく機械で実現することなどを前提条件として盛り込む。

 経産省と大手コンビニがICタグの導入を目指す目的は、大きく二つある。まず、レジでの会計業務の効率化だ。購入商品のICタグをまとめて読み取ることで、店員が1点ずつバーコードを読み取る手間を省く。人材不足に悩む小売業界の課題解決を狙う。

2025年をめどに、全店舗全商品にICタグを導入する
2025年をめどに、全店舗全商品にICタグを導入する
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 小売事業者に加え、メーカーや物流事業者などと販売情報などを共有することも大きな目的だ。「現在は、出荷分を販売できずに廃棄するなど無駄が生じている」(経産省)。販売状況や物流状況を関係者が把握することで、出荷量や商品配布の最適化に生かす。経産省はコンビニだけでなく、ドラッグストアやGMS(総合スーパー)にもICタグを広げたい意向だ。

 今回の宣言は、経産省と小売事業者、ICタグ事業者が協議を重ねた結果だという。経産省は2017年度内に正式な協議会を発足。協議会にはメーカーや物流事業者も加え、それぞれの立場での効率化検討などの議論を深める。ICタグ事業者やシステムベンダーも参加する見込みという。

 ただし、残された課題は少なくない。ICタグ価格の低廉化はもちろん、読み取り精度の向上といった技術的ハードルもクリアする必要があるという。メーカーがICタグを貼り付けることになるが、その費用負担は個別交渉となる見込み。負担を巡る交渉が難航する可能性もある。

 ICタグの活用は、アパレル業界が先行している。ファーストリテイリンググループの「ジーユー」は、ICタグを利用したセルフレジを2017年8月までに全店舗の半数に当たる176店舗での設置を発表済みだ。経産省と大手コンビニによる今回の宣言も、アパレル業界の取り組みに強く影響を受けているという。

 小売業界でも、経産省の支援を受けたローソンとパナソニックが、2016年12月にセルフレジ「レジロボ」の実証実験を開始、2017年2月にはICタグを導入した実験もスタートさせている。

 海外でも、小売店舗の業務効率化が進む。無人コンビニとして話題を集める米アマゾン・ドット・コムの「Amazon Go」は、画像認識技術やセンサー技術を活用して来店客や購入商品を認識。ICタグとは異なる手法で、店頭での会計を不要にするアプローチを採っている。