警察庁は2017年4月13日、遠隔操作の自動運転車を公道で実証実験する際の取り扱いについて基準案を発表した。一定の基準を満たせば特区内外に関わらず全国各地で公道実験を認めるもので、一般車両と実験車両の混在も可能。早ければ2017年夏から、車内にドライバーのいない自動運転車が公道を走行することになる。

 遠隔型の自動運転を巡っては欧米でも開発が進められており、ギリシャなどでは法改正を実施したうえで公道での実証実験を始めている。日本でも政府が2020年に無人自動走行による移動サービスの提供を始めることを目指しており、全国規模での公道実験解禁により海外勢の動きに対抗し実用化を加速させる。

 基準案では条件として、(1)走行中に通信環境が途絶しない場所であること(2)一般の道路利用者に著しい支障を及ぼさないこと(3)車両の前方や周囲を音や映像で確認できること(4)通信の遅延があることや遠隔では周囲の状況を必ずしも把握しきれないことを踏まえた安全対策を取っていること(5)緊急時に必要な操作ができる状態を維持すること(6)あらかじめ実験施設などで安全に自動運転できると確認していること(7)事前に警察による走行審査を受けること、などを盛り込んでいる。

 遠隔地で車両を監視・操作する人は一般車両のドライバーと同様に運転免許が必要で、車両の前後左右に遠隔型自動運転である旨の表示をすることも義務づける。実験台数は「原則として1台ずつ増やす」という条件を満たせば複数台での実験も認める。実験に使う公道は通行止めにする必要がなく、一般車両と実験車両が混在する環境で実証実験可能だ。許可期間は最大6カ月。

 法律面では従来、運転者が車両内で操作することを前提とするジュネーブ条約の規定が課題となっていた。これについて国連欧州経済委員会(UNECE)の作業部会が2016年3月に「車両のコントロールが可能な能力を有し、それが可能な状態にある者がいれば、その者が車両内にいるかどうかを問わず、現行条約の下で実験が可能」とする見解をまとめ、法的課題の解決に道が開かれた。

 併せて2016年6月に閣議決定した「日本再興戦略2016」では、2020年の東京五輪・パラリンピックまでに無人自動走行による移動サービスや高速道路での自動走行が可能となるよう、実証実験を可能とする制度やインフラ面での環境整備を2017年までに実施することを明記。これを受けて警察庁は、2016年6月から「自動運転の段階的実現に向けた調査検討委員会」を設置して技術面での検討を進めてきた。

 警察庁ではこの基準案について、4月14日~5月7日にパブリックコメントを実施したうえで5月中に正式決定する考え。各都道府県の公安委員会規則の改正が済み次第、2017年夏をめどに道路使用許可申請の受け付けを始める見通しだ。

 遠隔型の自動運転車を巡っては、内閣府がディー・エヌ・エー(DeNA)に委託し2016年11月に秋田県仙北市の田沢湖畔の公道で実証実験を実施した例がある。ただこの際は国家戦略特区内で、公道も通行止めにしたうえでの実験だった。基準案が正式決定すれば、こうした実証実験を全国各地で実施可能になる。