日本IBMは2017年4月12日、セキュリティ事業の説明会を開いた。同社観測によれば2016年に世界で起きた情報漏洩件数は前年比5.6倍の40億件超で、1回の情報漏洩で負担する平均的コストは400万ドル(4億4000万円)だった。

 脅威が世界的に高まる一方で、「日本の経営層はセキュリティ事故などが起こると一時的に関心は高まるが持続せず、セキュリティは経営課題としてプライオリティー(優先度)が低いままだ」と、志済聡子執行役員セキュリティー事業本部長は指摘。「政府指針にもある通り、セキュリティはコストではなく投資と考えるべき。もっと我がこととして考えてほしい」と話した。

日本IBMの志済聡子執行役員セキュリティー事業本部長
日本IBMの志済聡子執行役員セキュリティー事業本部長
[画像のクリックで拡大表示]

 志済氏によればIBMは世界でセキュリティ事業が好調で、特に欧州を中心に前年比で2倍、3倍と成長しているという。「日本ももちろん前年を上回っているが、2倍・3倍と比べると成長の順位は低い」(同)。

 日本の経営層のセキュリティ投資意欲が海外ほど高まらないなかでも、同社の事業はプラス成長できた。志済氏はその要因を「(サイバー攻撃やマルウエアなどの情報である)インテリジェンスの豊富さと、(顧客のセキュリティ状況を遠隔監視する)SOC(セキュリティ・オペレーション・センター)のレベルの高さ、グローバルで活動できるケイパビリティーの3点が顧客に評価された」と分析した。

 日本IBMのセキュリティ事業は2016年12月期に「クラウド、コグニティブ、コラボレーション」の頭文字を取った「3C」をスローガンにして事業を推し進めた。2017年12月期も引き続き3C戦略を取り、「オンプレミス製品をどんどんクラウドサービスでも提供するようにし、中堅中小企業や個人でも利用しやすくする」(志済氏)。

 質問応答システム「Watson」をセキュリティ分野にも応用する取り組みも進んでいる。志済氏は「利用者の語りかけに応じて現在のセキュリティ状況を応答するシステム『Havyn(ヘイヴン)』を2017年後半に商用化する見込み」と明かした。