GEヘルスケア・ジャパンは2017年4月7日、2017年の成長戦略について説明会を開いた。東京都日野市の日野本社工場で進めるデジタル化施策を基に、病院などの医療機関向けデジタルサービスを展開するとした。GEヘルスケア・ジャパンは、CT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)といった医療装置の製造などを手掛ける。

 同社の多田荘一郎代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)は「これまでの5年を振り返ると、製品の販売台数が伸び悩んでいる。従来のお客様へのサポートや新たなシェア獲得もこれまで通り重要な施策だが、デジタル化で新たな市場を開拓していく必要がある」とした。

デジタル戦略について説明するGEヘルスケア・ジャパンの多田荘一郎代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)
デジタル戦略について説明するGEヘルスケア・ジャパンの多田荘一郎代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)
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 切り札とするのが日野本社工場で実践中のデジタル化施策「ブリリアント・ファクトリー」だ。工場内にセンサーをはじめとするIoT(インターネット・オブ・シングズ)関連技術を導入して、ヒト、モノ、コトに関する情報を収集。効率よく医療装置を開発できるようカイゼン活動につなげている。

 GEヘルスケア・ジャパンは2016年から本格的にデジタル化施策を開始。「お客様である病院にすぐ応用できるような成果が現場で得られている。医療業界向けにデジタルサービスを展開していきたい」と多田社長は意気込みを語る。

 施策の成果の一つが、現場担当者が名札型のウエアラブルセンサーを使った取り組みだ。「現場担当者に身に付けてもらい、ヒトの動きのムダを探った」と田村咲耶製造本部Brilliant Factoryプロジェクト長は話す。センサーから得たデータの分析には、GEグループの分析基盤「Predix」を使った。

 得られたデータを基に、現場担当者が工場内で長く滞在するところをヒートマップと呼ぶ手法で見える化。結果、「工場内の作業エリアから離れたところに、現場担当者がしばしば足を運んでいるムダを突き止められた」(田村プロジェクト長)。

名札型センサーを使って得た分析結果を示す田村咲耶製造本部Brilliant Factoryプロジェクト長。現場担当者の動きのムダが生まれている場所を指示している
名札型センサーを使って得た分析結果を示す田村咲耶製造本部Brilliant Factoryプロジェクト長。現場担当者の動きのムダが生まれている場所を指示している
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 その場所にはゴミ箱があった。担当者が作業で出たゴミを捨てに行くのに移動の手間がかかっていたのだ。ゴミ箱を作業場所のそばに移し、担当者の移動のムダを省けたという。

 このほか、工場内の製造装置の稼働データを収集して生産効率の向上につなげる取り組みも進めている。これらは工場での取り組みだが、「取り入れている技術やカイゼンの考え方は病院など医療現場にも応用できる」とGEヘルスケア・ジャパンの伊藤浩孝本社営業本部長は話す。

GEヘルスケア・ジャパンの伊藤浩孝本社営業本部長
GEヘルスケア・ジャパンの伊藤浩孝本社営業本部長
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 例えば、医療装置の稼働データを分析して、効率よい検査スケジュールを組めるようにしたり、医療スタッフの作業効率を高めるために医療機器の配置を見直したりできるという。

 伊藤本部長によると、既にセンサーを組み込んだ医療装置を病院に納入し、ネットワーク経由で取得した稼働データで故障の予兆を捉えて、予防保守する成果が出ているという。「医療装置の稼働率を下げることなく検査件数を増やせている。センサーを活用したデジタル事業を今後も展開していきたい」(伊藤本部長)。