三菱電機は2017年4月7日、人工衛星を生産する新拠点を、神奈川県にある鎌倉製作所内に建設すると発表した。特徴は工場内の生産設備などにIoT(インターネット・オブ・シングズ)を導入して生産状況を見える化すること。これにより生産効率の向上を目指す。

三菱電機は人工衛星を生産する新拠点でIoT化を図る
三菱電機は人工衛星を生産する新拠点でIoT化を図る
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 同社が新たに建設するのは「新衛星生産棟」と呼ぶ施設。延べ床面積が1万3000平方メートルで、鉄骨造りの4階建てだ。約110億円を投資して、2019年10月の稼働を目指す。稼働を機に、並行生産できる衛星数を10機から18機に増やす。

 新衛星生産棟を建設する背景には、日本の宇宙開発の進展がある。政府は2013年以降、宇宙関連の政策強化を打ち出している。それに伴い、衛星開発などを手掛ける三菱電機の宇宙システム事業の売上高は、1990年代の年間300億円程度から現在1000億円を超えるようになった。

 同社は2021年度、同事業の売上高1500億円を目指す。これに向けて「生産能力を増強するため、新衛星生産棟の建設を決めた」と同社の岡村将光常務執行役電子システム事業本部長は説明する。

三菱電機の岡村将光常務執行役電子システム事業本部長
三菱電機の岡村将光常務執行役電子システム事業本部長
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 新衛星生産棟では、製品の企画から設計、製造、試験といった衛星の生産活動の全てにIoTを導入する。製造プロセスを管理するシステムや設備にセンサーを組み込むなどしてデータを取得したり、現場担当者が入力する作業データや試験のデータを収集したりして、工場内の生産活動を見える化、カイゼン活動などにつなげる考えだ。

 鎌倉製作所で衛星の製品企画や設計を担う設計棟や、衛星に組み込む機器の生産拠点である相模工場(2017年6月完成予定)ともネットワークで連携。離れた拠点でも設計や生産に関するデータを取得できるようにして、拠点を超えてカイゼン活動を進める。

 「お客様からのコスト削減ニーズは日に日に高まっている。新衛星生産棟の稼働を機に、品質を維持しつつコストや工期を3割削減したい」。岡村常務執行役はこう意気込む。

 人工衛星の生産で特に時間をかけるのが、製造段階の次の試験段階という。しかし、製造段階でも担当者が機器などが正常動作するかを確認することが少なくない。

 そこで、動作確認した証跡データも製造現場から収集。試験段階で同データを活用して試験項目の件数を削減、品質を担保しながら試験工数を削減するという。