米インテルとPreferred Networks(PFN)は2017年4月6日、PFNの深層学習(ディープラーニング)フレームワーク「Chainer」の開発で協業すると発表した。汎用CPU上でディープラーニングを可能にすることで、様々な機器へ人工知能(AI)を搭載できるようにする。

米インテルとPFNは「Chainer」の開発で協業すると発表
米インテルとPFNは「Chainer」の開発で協業すると発表
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 インテルが同日開催した「インテル AI DAY 2017」の基調講演において、PFNの西川徹社長は、「IoT(インターネット・オブ・シングズ)とディープラーニングを融合することで新しいアプリケーションを開発していく。そのためにも様々なプロセッサを開発するインテルとの協業は重要だった」と述べた。「当社のChainerは、他のフレームワークと比べて使いやすさや高速処理といった強みがある」(西川氏)。

PFNの西川徹社長
PFNの西川徹社長
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 インテルとPFNは協業を通して、AIやディープラーニングを活用したアプリケーションの開発を容易にする。画像認識や機械制御、異常検知といったAIによる機能を汎用のIoT機器にも実装できるようにする。

 具体的には、インテルはCPUなどの汎用プロセッサや高速演算が可能なアクセラレーターにディープラーニングを実装できる仕組みを設ける。同社のプロセッサ「Xeon」「Xeon Phi」「Arria 10 FPGA」「Nervanaテクノロジー」などにChainerを組み合わせる。

 PFNは、それらのプロセッサー上にChainerを適用できるようにする。インテルの数値計算ライブラリ「Math Kernel Library(MKL)」や、CPU向けに最適化した深層学習ライブラリ「Math Kernel Library Deep Neural Network(MKL-DNN)を基盤としてChainerを実装できるようにする。

PFNはインテルのプロセッサ上にChainerを適用できるようにする
PFNはインテルのプロセッサ上にChainerを適用できるようにする
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 両社は協業成果を開発者コミュニティに公開し、AI市場でのシェア拡大を狙う。

協業を通してChainerの強化を加速

 PFN知的情報処理事業部の海野裕也 事業部長は、インテルとの提携によって「ハードウエアや運用コスト、消費電力に応じて最適なAIを開発できる」と説明する。

 同氏によれば「Chainerは開発者にとって使いやすく、複雑なニューラルネットワークを設計しやすい」特徴を持つ。同社はChainerの強みを生かしつつ、性能向上のためのフレームワーク開発を2017年から加速しているという。

PFNでの最近のChainerの開発状況
PFNでの最近のChainerの開発状況
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 同社は2017年1月に大規模な分散学習を可能にする「ChainerMN」の実験結果を公表しており、2017年2月にはAIが試行錯誤を繰り返しながら自動で学習していく深層強化学習フレームワーク「ChainerRL」を公開している。2017年3月からはCPUに最適化したChainer「Intel版Chainer」のリポジトリを公開している。

 2017年5月には、Chainerの次世代モデル「Chainer 2.0.0」を公開する予定という。