日本IBMは2017年4月4日、企業のITシステムの運用や保守を担うグローバル・テクノロジー・サービス(GTS)事業の戦略説明会を開催した。同社はハイブリッドクラウドや人工知能(AI)といった技術のGTSへの適用を進めている。説明会では「Watson」を活用した業務向けサービスや、複数ベンダーのクラウドを利用する企業向けの運用支援サービスなどを紹介した。

 会見で同社は、サポートデスク業務向け支援サービス「ワークプレース・サポート・サービス with Watson」の日本語版サービスを同日より提供開始すると発表した。Watsonを従業員向けのサポートツールに応用することで、社内の問い合わせに対して自動で回答できるようにする。チャット形式のやり取りを通じてWatsonが適切な応対を学んでいき、回答の品質を高められるという。

日本IBMは「ワークプレース・サポート・サービス with Watson」の日本語版サービスの提供開始を発表した
日本IBMは「ワークプレース・サポート・サービス with Watson」の日本語版サービスの提供開始を発表した
(出所:日本IBM)
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 既に金融機関や製造業向けに自動化サービスを提供しており、人件費の削減やインフラ運用の効率化に貢献している。米IBMはITインフラの運用自動化や障害予測といった用途へWatsonの適用を広げる方針。Watsonを使うことで、GTS事業の強化に弾みを付ける。

 事業継続に関する新サービスも発表した。米IBMが2016年10月に買収したインドSanovi Technologiesの事業継続技術を活用して、ハイブリッドクラウド環境の障害復旧を自動化する。海外では大手銀行などで採用実績があり、日本でも2017年秋ごろから提供を始める。

 日本IBM取締役専務執行役員のヴィヴェック・マハジャン グローバル・テクノロジー・サービス事業本部長は、GTSがIBM全体で売上高の約4割、日本IBMでは約5割を占める主力事業であると説明。企業では運用・保守コストがIT予算の約7割を占めるといい、「これらを削減して新規ビジネスへ予算を回すことが重要だ。GTSはそれを支援する」と説明した。

日本IBM取締役専務執行役員のヴィヴェック・マハジャン グローバル・テクノロジー・サービス事業本部長
日本IBM取締役専務執行役員のヴィヴェック・マハジャン グローバル・テクノロジー・サービス事業本部長
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 同氏は企業のITインフラはハイブリッドクラウドを使うことが当たり前になりつつあると指摘した。結果として、一企業が利用するクラウドサービスのベンダー数も増加傾向にあるという。日本IBMは異種クラウドサービス間のデータ連携や複数のクラウドサービスを横断した業務プロセスの運用自動化を担う「オーケストレーション」技術を提供。企業が異種クラウドサービスを効果的に使えるよう支援する。