フジテレビジョン(以下、フジテレビ)と日本マイクロソフト(以下、日本MS)は2017年3月29日、クラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」の人工知能(AI)技術を活用し、新しい視聴者体験を提供する事業に共同で取り組むと発表した。

 第一弾として、フジテレビの動画投稿サイト「DREAM FACTORY (以下「ドリファク」)」の配信基盤にAzureを採用。投稿された動画コンテンツをAIを活用して多言語に翻訳し、音声から自動で字幕を生成する機能を2017年7月1日から提供開始する。これにより、視聴者は動画コンテンツを見ながら言語を選ぶだけで、英語、中国語、スペイン語、フランス語の4カ国語への翻訳と自動での字幕生成が可能となる。将来的には最大9カ国語への対応を進めるという。

 都内で開かれた共同記者会見の席上、フジテレビの常務取締役 大多亮氏は、「クリエイターやアーティストが動画を投稿するドリファクは、今の時代にあった『スター』を創りだすエンジンといえる。日本MSのAI技術が加わることで、動画コンテンツが多言語に翻訳されグローバルに展開できるようになる。スター誕生の可能性はもっと広がる」と挨拶。続けて、視聴者が言語を選んでコンテンツを楽しめるようになるだけでなく、AIによって様々な新しい視聴者体験が可能になることで、「映像表現に革命が起こると期待している」と述べた。

フジテレビジョン 常務取締役 大多亮氏(撮影:下玉利尚明、以下、同じ)
フジテレビジョン 常務取締役 大多亮氏(撮影:下玉利尚明、以下、同じ)
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 今回の連携では、フジテレビは新しい視聴者体験の提供だけでなく、AI技術向上のための研究材料としてドリファクの動画コンテンツを日本MSに提供する。日本MSでは、ドリファクから提供された動画コンテンツをAI技術のブラッシュアップのための研究材料として活用。日本語の認識率の向上、顔認知技術による肖像権チェック、映像モデレート技術による成人向けコンテンツの自動排除処理、自動翻訳、索引付けなどの機能向上につなげていく。日本MS 代表取締役社長 平野拓也氏は、「AIの言語の認識率が高まることで、動画コンテンツの魅力がより高まることを期待する」と述べた。

日本マイクロソフト 代表取締役社長 平野拓也氏
日本マイクロソフト 代表取締役社長 平野拓也氏
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 日本MSのマーケティング&オペレーションズ部門 プラットフォーム戦略本部 本部長の大谷健氏は、AIで可能となる新しい視聴者体験の詳細を説明した。大谷氏によれば、提供される機能は多言語翻訳、自動字幕生成の機能のほか、「自動顔認識機能」、「キーワード抽出機能」、「顔ぼかし機能」、動画コンテンツの「自動要約機能」、動画コンテンツの様々なシーンから任意のテキストで該当するシーンを検索し抽出する「テキスト抽出機能」などだ。

日本マイクロソフト マーケティング&オペレーションズ部門 プラットフォーム戦略本部 本部長 大谷健氏
日本マイクロソフト マーケティング&オペレーションズ部門 プラットフォーム戦略本部 本部長 大谷健氏
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 例えば、自動顔認識機能を使えば、視聴者は観たい女優のシーンを抽出して楽しむことができ、キーワード抽出機能を使えば動画コンテンツのセリフなどにキーワードが含まれているシーンだけを取り出して視聴することもできる。自動要約機能なら28分程度の動画コンテンツを自動で1分程度に要約するという。大谷氏は「当面、多言語翻訳、自動字幕生成機能以外の提供時期は未定だが、今後、実装を検討していく考え」と話した。

 フジテレビでは、ドリファクに多言語翻訳や自動字幕生成機能が実装される2017年7月1日~9月30日まで、世界展開を視野に入れた映像作品を募集するショートムービーコンテンストを実施する。日本MSも2017年3月29日~5月29日に、「フジテレビ DREAM FACTORY is NOW ON Azure 広告動画コンテスト」を実施する。

視聴者は自分で言語を選択して動画コンテンツを楽しめる
視聴者は自分で言語を選択して動画コンテンツを楽しめる
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顔認識機能のデモ画面。ドラマに登場する女優の顔が認識されて表示される。クリックすると該当のシーンにジャンプする
顔認識機能のデモ画面。ドラマに登場する女優の顔が認識されて表示される。クリックすると該当のシーンにジャンプする
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「新たな視聴者体験の提供」を目的にタッグを組んだ両社
「新たな視聴者体験の提供」を目的にタッグを組んだ両社
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