小中学校など教育現場向けソフトを手掛けるベンチャー企業、ロイロ(横浜市)は2017年3月29日、ベネッセコーポレーションに対して、ソフトの模倣による損害賠償を求めるため、岡山地方裁判所に訴訟を提起したと、発表した。

 ロイロが問題視しているのは、ベネッセが販売するWindowsアプリ「オクリンク」だ。2016年春、教育用ソフト「ミライシード」のオプション製品として販売が始まっている。

 このオクリンクは、ロイロが開発して2014年4月に販売を開始した「ロイロノート・スクール」を模倣したものだ──。こう主張するロイロは2017年3月27日、提訴に踏み切った。

 ロイロノート・スクールは、電子化したテストを提出したり採点したりする機能や、電子化した授業用資料やノートを共有する機能を備える授業支援アプリだ。学校の授業のなかで児童や生徒、学生が自らの考えをまとめたり、発表資料を作ったりすることもできる。iPadやWindowsタブレットなどで動作する(写真)。

写真●ロイロが提供している「ロイロノート・スクール」の画面
写真●ロイロが提供している「ロイロノート・スクール」の画面
写真提供:ロイロ
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 児童や生徒、学生は、授業のなかで、調べものをした結果などを、ロイロノート・スクールの画面から、仮想的な“カード”に書き込んでいく。このカードには、言葉で表現する「テキストカード」や、絵で表現する「お絵かきカード」のほか、写真や動画を扱えるものもある。

 児童らはこれらのカードを複数作ったり、内容を編集したりできる。そのうえで、カード同士をつなげたり並べ替えたりしていくことで、最終的にその流れで発表できる資料が作れる。作った資料は、先生に提出したり、他の児童や生徒と共有したりすることが可能だ。

 ロイロノート・スクールは、直感的な操作で児童や生徒が自らの考えを整理してまとめるのに役立つといった点が評価され、2014年11月、日本eラーニング大賞 総務大臣賞を受賞した。高校や大学、専門学校を含めて、500校以上の導入実績を持つ。

 ロイロの杉山浩二代表取締役は「ある学校への入札を機にオクリンクの存在を知った。オクリンクは、当社のロイロノート・スクールと、画面のデザインや備える機能が酷似している。ベネッセにそれを伝えたうえで、オクリンクの販売をやめるよう申し入れたが、聞き入れてもらえなかったので、裁判に踏み切ることにした」と説明する。

 ロイロはIPA(情報処理推進機構)の未踏ソフトウェア創造事業に採択されたことを機に、2007年に創業。デジタルカメラやスマートフォンなどで撮影した動画を待ち時間なくスムーズに編集でき、自動編集機能なども備えるアプリ「LoiLoScope2(ロイロスコープ2)」や、ビデオゲームのプレイシーンを高精細な動画で記録できる「ロイロ ゲーム レコーダー」など、独創的なソフトを世に送り出してきた。

 「規模の小さな当社が培ってきた知的財産を横に見ながら模倣して業績を上げようとしている。そんな実力のなさゆえの大企業の動きに、がっかりしている」と、ロイロの杉山代表取締役は話す。「教育向けの製品でもあり、自社ならではの製品やサービスを提案するといった、前向きな行動を取ってほしい」と続ける。裁判では1600万円の損害賠償を求めていくという。

 一方、今回のロイロによる提訴を受けて、ベネッセコーポレーションの広報担当者は「オクリンクがロイロノート・スクールを模倣しているという事実はない。訴状が届いていないため、これ以上のコメントは控えたい」という声明を出している。