センサーなどIoT(インターネット・オブ・シングズ)機器に適した軽量Linuxといった組み込み用途のOSを手がけるウインドリバーは2017年3月24日、産業分野向け仮想化基盤ソフト「Wind River Titanium Control」を発表した。工場などの産業現場で発生するデータを活用する“インダストリアルIoT”向けソフトの新製品との位置付けだ。

Wind River Titanium Controlのソフトウエア構成
Wind River Titanium Controlのソフトウエア構成
(出所:ウインドリバー)
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 Titanium Controlは国内を含むグローバルで2016年下期前半に出荷済み。価格は非公開だが、ライセンスベースの標準価格のほかに、事前にユーザーと合意した成果を達成した場合にユーザーと利益を分け合うバリューベースの価格設定を選択できる。

 工場などの産業分野では、機械を自動制御するPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラー)や、システムを監視してプロセス制御を行うSCADA(監視制御システム)といった制御系システムが稼働している。Titanium Controlはこれら制御系システムを仮想サーバー上で動作させるためのクラウド基盤を提供する。

 オープンソースソフトウエア(OSS)のプライベートクラウド運用基盤をベースに開発した。仮想サーバーを動作させるコンピューティングノードはLinuxとKVMがベース。データを格納するストレージノードは分散オブジェクトストレージソフトのCephを使う。クラウドのオーケストレーション機能はOpenStackをベースに開発した。

産業IoTが要求するレイテンシーと可用性を追求

 Titanium Controlの最大の特徴は、産業分野の要件に合わせて性能と可用性を高めたこと。米ウインドリバーでインダストリアル担当ソリューションダイレクターを務めるリッキー・ワッツ氏は、「性能面では仮想サーバー同士が通信する仮想スイッチを高速化し、可用性は何年間も連続運用できるレベルに高めた」と説明する。

 ウインドリバーの営業技術本部で本部長を務める志方公一氏は次のように補足する。「仮想サーバーでありながら割り込み処理に対するレイテンシー(遅延)が低い。機械制御には短時間での反応が求められるので、これに応えられるように改造している。稼働率も一般的なエンタープライズ向けと2桁違うシックスナイン(99.9999%)を実現しており、年間で約30秒しかダウンしない」。

ウインドリバーの営業技術本部で本部長を務める志方公一氏
ウインドリバーの営業技術本部で本部長を務める志方公一氏
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 このタイミングでTitanium Controlを開発した理由について、ワッツ氏は二つの側面があるとした。一つは、多くの産業において施設が寿命を迎えており、プラットフォームの切り替え需要があること。もう一つは、工場内で生成する大量のIoTデータを加工して使いこなす需要が高まっていることである。