富士通と富士通ラーニングメディアは、デジタルビジネスを推進できる人材の育成に特化した研修プログラム「FUJITSU Digital Business College」を2017年7月に始めることを明らかにした。3月中にも募集を始める。企業でAI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)などを活用した新規事業を推進する人材へのニーズが高まっていることに対応する。
7月に「部門長コース」「デザイン思考コース」「AI・Analyticsコース」「セキュリティコース」の4コースを開講する。情報システム部門の部門長や実務者を対象に受講者を募る。研修には富士通が東京都内に設けたオープンスペース「FUJITSU Digital Transformation Center」(写真1)などの場を活用する。
富士通の渡辺誠・統合商品戦略本部長代理は、「デジタルビジネスに関する相談は顧客企業のLOB(Line Of Business:事業部門)から来ることが多く、当社も相談を受け付ける体制を整えている。だが、LOBは情報システムのスキルが高くない。デジタルビジネスを早期に立ち上げるには情報システム部門の人材を教育した方がいい」と説明する。
シリコンバレー研修も
部門長コースは期間4カ月で価格は100万円(税別)。富士通が米国シリコンバレーに現地のスタートアップ企業との協業のために設置している拠点「Open Innovation Gateway(OIG)」(写真2)を生かした約1週間のワークショップ型海外研修が目玉になる(渡航費用が別途必要)。現地で最先端のデジタルビジネス創出・推進の手法に触れられるメリットを訴求する。
デザイン思考、AI・Analytics、セキュリティの3コースはそれぞれ期間6カ月で価格は200万円(税別)。情報システム部門の実務者(リーダークラス)を対象とする。ITベンダーが提供する研修で6カ月という長期のものは珍しく、大学や専門学校などが提供する教育プログラムと競合する。
渡辺本部長代理は「既存の教育機関とは異なり、IT企業の富士通だからこそ提供できる教育環境がある」と差異化のポイントを説明する。富士通はデジタルビジネスに関するPOC(概念検証)を約1500件手掛けてきた実績を持つ。実際にPOCに参加した担当者を講師として参加させるなどして、実践的なノウハウを提供する。
受講者向けには、富士通が持つ製品やデータを生かした実習環境も用意する。デジタルビジネス基盤の「MetaArc」や、AI基盤の「Zinrai」などを、富士通が収集・蓄積したビッグデータと共に利用してシステム構築を体験できるようにする。
富士通は全社を挙げてデジタルビジネス支援を掲げ、組織体制や製品の強化を急いでいる。
今回の研修プログラム強化もその一環だ。渡辺本部長代理は「デジタルビジネスに関するスキル・ノウハウを持つ顧客が増えれば、結果的に市場拡大とビジネス獲得につながる」と狙いを説明する。