米IBMのデイビッド・ケニー IBM Watson&クラウドプラットフォーム担当シニア・バイス・プレジデントは2017年3月20日(米国時間)、ラスベガスで開催しているクラウドのイベント「IBM InterConnect 2017」の基調講演でWatsonを中心としたクラウド戦略を話した。

米IBMのデイビッド・ケニー IBM Watson&クラウドプラットフォーム担当シニア・バイス・プレジデント
米IBMのデイビッド・ケニー IBM Watson&クラウドプラットフォーム担当シニア・バイス・プレジデント
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 ケニー氏が最初に紹介したのがオブジェクトストレージ「IBM Cloud Object Storage Flex」だ。データを使って価値を生み出すWatsonをクラウドサービスの中核とするIBMは、Watsonで使うデータを保存しやすくするためストレージサービスを強化した。

 「Object Storage Flexはどれぐらいデータを扱うか定かではない時に適したサービスだ」(ケニー氏)。頻繁に入出力が発生するホットデータや、保存の必要はあるものの入出力の頻度が低いコールドデータなど、データを扱う頻度に応じて利用料金が自動で決まる。

 分析用データは分析するまで入出力の頻度が見積もりにくく、Object Storage Flexが適しているという。IBMの試算では、Object Storage Flexの利用料金はAmazon Web Services(AWS)のストレージサービス「S3」と比較して53%、Microsoft Azureのストレージサービスの料金プラン「GRS Cool Tier」に比べて75%、それぞれ安価になる。

AIによる雇用促進には教育が必要

 ケニー氏は「Watsonを効果的に使うには、データサイエンスの知識が必要だ」とし、ITエンジニアを育成する米Galvanizeとの提携を紹介した。Galvanizeはプログラミングなどの教育に加えて、データサイエンスの教育カリキュラムを用意。その中でWatsonのAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を使い、Watsonの使い方を学ぶという。

 基調講演では不動産の間取りやデザインが人間の生産性や健康にどんな影響を与えるかを分析する米Delos Livingや、ゲームの開発・分析基盤を提供する米PlayFabなどを紹介。Watsonを導入した企業が導入の効果を出していることをアピールした。

 「AIが雇用を奪うということは無い」。ケニー氏はこのように語る。Watsonを導入することで作業が効率化できることで、これまで取り組めなかった新しい事業ができて雇用は増えるという。ただし、単純な事務作業は自動化されて無くなるため「雇用を増やすためには訓練や教育に投資が必要だ」(ケニー氏)という。