「ブロックチェーンはトランザクションの根本を変える力がある」。米IBMのアーヴィン・クリシュナ ハイブリッドクラウド&ディレクター担当シニア・バイス・プレジデントは2017年3月20日(米国時間)、米国ラスベガスで開催中のクラウド関連イベント「IBM InterConnect 2017」の基調講演でこう話した。クリシュナ氏は「ブロックチェーンは決済だけにとどまらない」と、「IBM Blockchain」を使った事例などを紹介した。

米IBMのアーヴィン・クリシュナ ハイブリッドクラウド&ディレクター担当シニア・バイス・プレジデント
米IBMのアーヴィン・クリシュナ ハイブリッドクラウド&ディレクター担当シニア・バイス・プレジデント
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 クリシュナ氏は「ブロックチェーンがネット上の処理の共通プロトコルになる」と話す。IBMが参加するオープンソースのブロックチェーン基盤「Hyperledger Fabric」を使ったIBM Blockchainは「1万件のトランザクションを1秒で処理できる」(クリシュナ氏)と、性能の高さにも自信を見せた。

 ブロックチェーンは仮想通貨の基盤や送金技術といった金融業界での実証実験が先行していたが、クリシュナ氏は「全業界で注目が高まっている」とする。新たに発表した「IBM Blockchain for Hyperledger Fabric v1.0」は、商用サービスとして初めてHyperledger Fabric v1.0に対応し、実証実験のフェーズから商用利用のフェーズに入ったという。

 クリシュナ氏は事例として、ブロックチェーンを使ってダイヤモンドの品質鑑定書のデジタル化に取り組む英Everledgerを紹介した。IBM Blockchainの商用利用を始めているEverledgerのリアン・ケンプ創業者兼CEO(最高経営責任者)は「ブロックチェーンでダイヤモンド業界の問題を解決する」と話した。

英Everledgerのリアン・ケンプ創業者兼CEO(最高経営責任者)
英Everledgerのリアン・ケンプ創業者兼CEO(最高経営責任者)
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鑑定書の偽装を防ぐ

 ダイヤモンド業界の課題とは「キンバリープロセス」を守ることだ。キンバリープロセスはダイヤモンドが紛争の資金源になるのを防ぐことを目的とした承認プロセスで、紛争の資金源として売買されたダイヤモンドではないことを証明するためのもの。証明できれば取引価格が上がるため、「鑑定書の偽装などが問題になっていた」(ケンプ氏)。

 Everledgerはダイヤモンドの売買をブロックチェーンで管理する。取引履歴を関係者が分散保存し、お互いに同期することで鑑定書に記載する取引履歴の偽装を防ぐ狙いだ。ダイヤモンドを個別認識するため、レーザー分析や高画質画像などを組み合わせて「ダイヤモンドの指紋のようなメタデータ」(ケンプ氏)を作り、取引履歴と一緒に保存する。

 ケンプ氏は「いつでも監査を受けられるような、透明性のある状態を作るように考え方を変えるべきだ」と話す。企業が保存する取引の管理をブロックチェーンのような追跡可能な形で保存することで監査が受けやすくなるとし、ダイヤモンド以外にもブロックチェーンが広く活用できると訴えた。