ディー・エヌ・エー(DeNA)のキュレーションメディア事業に関する問題を調査していた第三者委員会は2017年3月13日、調査結果に関する会見を開いた。同事業を始めるにあたってDeNAが買収した企業とのコミュニケーション不全など、事態の悪化を「自己修正」を妨げる要因が複数あったと指摘。反省と再発防止を促した。一方で著作権侵害の有無については、確定はできないとして「侵害のおそれがあった」との認識を示すにとどめた。

名取弁護士(左から二人目)ら第三者委員会のメンバー
名取弁護士(左から二人目)ら第三者委員会のメンバー
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 「もっぱら、自社の経済的利益ばかりに着目するのではなく、ステークホルダー全員に配慮し、経営判断や事業運営に関する適切なリスク感覚を醸成すべきだ。真摯に反省し、再び社会の信頼をえられるよう期待している」。第三者委員会の委員長を務めた名取勝也弁護士は、調査報告をこう総括した。

 同委員会は問題の背景として、事業運営に関する「自己修正」を妨げる要因が複数存在したと述べた。要因の一つとして名取弁護士が挙げたのがコミュニケーションの不十分さだ。買収した企業とDeNA、同事業部と他の事業部、同事業の責任者と現場従業員、取締役や執行役員など、「あらゆる階層、場面において」(調査報告書)起きていたという。

 名取弁護士はまた、キュレーションメディア事業を通じて「DeNAがどのような価値を誰に提供するのかが見えにくかった」とも述べた。報告書では同社が、そもそもキュレーション事業とは何かという問いに対する明確な答えを持ち合わせないまま、同事業へ参入した印象を受けると指摘。iemoやペロリの買収後、キュレーション事業に対する「自社なりの理解や想いがあったようには思えず、(中略)単に対象領域を広げていっただけのように感じる」(報告書)とした。

 調査で聞き取りしたDeNAの社員は「他サイトのコピペ(コピー・アンド・ペースト)を促す意図はなかったと話したが、同委員会が外部ライターにヒアリングしたところ、18人中8人のライターが、コピペを推奨しているかのような印象を持ったという。「(DeNAがコピペを推奨しているように)感じてしまった外部ライターがいたことは事実」(名取弁護士)。

 同委員会は著作権侵害があったかどうかについて、「侵害のおそれがあったと認定はするが、確定的に侵害があったかどうか踏み込んで断定はしていない」(名取弁護士)と述べた。委員会の職務は問題点に関する事実の認定と改善策の提言であり、損害賠償請求や個々の役職員の責任追及については職務外とした。