日本IBMは2017年3月13日、気象予測データの配信サービスを始めた。IBMはデータの配信サービスを人工知能(AI)「Watson」の事業と位置付ける。Watsonと一緒に、Watsonが分析するデータを販売する狙いだ。

 気象データの配信サービスは、2016年1月に米IBMが買収した米The Weather Companyが収集したデータを使う。日本IBMの本社内に気象予報センターを設置し、気象予報士が天気、気温、風向などを予測する。IBMは2017年2月27日に、気象庁から気象予報業務の許可を取得した。

 The Weather Companyのマーク・ギルダースリーブ プレジデント ビジネス・ソリューションズ担当は「気象は全てのビジネスに影響を及ぼしていると言ってよい。ビジネスの予測には気象データが必要だ」と話した。価格は「目安として最小利用料が月額10万円程度」(ギルダースリー氏)。詳細は利用規模や業界によって異なるため、個別見積もりだ。

米The Weather Companyのマーク・ギルダースリーブ プレジデント ビジネス・ソリューションズ担当
米The Weather Companyのマーク・ギルダースリーブ プレジデント ビジネス・ソリューションズ担当
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 ワトソン事業部ビジネス推進部長兼The Weather Company担当の加藤陽一氏は「気象予測データを分析に使うユースケースをコンサルタントが提案していく」と話した。「例えば電力業界には、気象情報とWatsonを使って必要な発電量の算出するシステムを提案する」(同)。

ワトソン事業部ビジネス推進部長兼The Weather Company担当の加藤陽一氏
ワトソン事業部ビジネス推進部長兼The Weather Company担当の加藤陽一氏
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 ワトソン事業部長執行役員を務める吉崎敏文氏は「業界ごとの気象データを提供する。Watsonも業界別、目的別に提供していく」と話した。気象データは航空業界向けに気流や積乱雲の動きを予測したデータを提供したり、電力業界向けに向こう2週間の気温予測データを提供したりする。

ワトソン事業部長執行役員を務める吉崎敏文氏
ワトソン事業部長執行役員を務める吉崎敏文氏
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電力業界向けを想定した予測気温データ。可視化するツールが使える
電力業界向けを想定した予測気温データ。可視化するツールが使える
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 IBMは「気象予測の精度向上のため、気象予測にもWatsonを使っていく」(吉崎氏)。現在は配信する気象予測のデータ作成にWatsonを使わず、2016年6月にIBMが開発した気象予測モデル「Deep Thunder」などを使っている。Watsonを使うことで「例えば長期的な気象予測の精度向上が期待できる」(同)という。

 吉崎氏は2016年のWatson事業の業績について質問を受け、「200以上の企業が導入し、大きく成長した。2017年はさらに拡大していく」と話した。Watsonを導入する効果が得やすい業界としては、医療業界があるという。

 吉崎氏は医療業界でWatsonを導入した米国のがん研究所「MDアンダーソンがんセンター」で、Watsonを使った医療研究プロジェクトが停止した件について質問を受けた。同氏は「ビジネス上の合意が形成できずプロジェクトが停止した。Watsonがデータをうまく分析できなかったといった事実はない」と話した。