World Wide Web FoundationはWeb生誕28周年を迎えた現地時間2017年3月12日、英国の科学者でWebの発明者でもあるTim Berners-Lee氏の公開書簡を掲載した。同氏は、この1年余り懸念を募らせている3つの問題として、「個人情報の管理」「フェイクニュース」「オンライン政治広告」を挙げた。

 Berners-Lee氏は、Webが人類すべてにとって役立つツールとして真の可能性を発揮するには、これら問題の解決に取り組まなくてはならないと、オンラインコミュニティーに呼びかけている。

 現在、ほとんどのインターネットユーザーが一握りのソーシャルメディアや検索エンジンを使ってニュースや情報を入手している。ユーザーのクリックで収入を得ているこれらサービスは、アルゴリズムによってユーザーの興味を引くコンテンツを表示する。結果的に、ユーザーの好奇心や先入観に訴えるようなコンテンツが拡散することになり、悪意のあるグループはこうした仕組みを悪用して金銭や政治的利益のために偽情報を拡散させているとBerners-Lee氏は指摘している。

 同氏は、米Googleや米Facebookなどに対して、引き続きフェイクニュース排除に取り組むことを望む一方、ニュースの成否を判断する中央的組織を設置することは避けるべきだと提言している。

 また同氏が引用した調査データによると、2016年の米大統領選では約5万種類の政治広告が毎日Facebook上で配信され、その一部は有権者を偽サイトに誘導したり、投票を思いとどまらせるような内容のものだった。

 同氏は、倫理に反したオンライン政治広告には厳しい規制が必要だと述べ、アルゴリズムの透明性向上や共通原則の策定なども提案した。

 さらに同氏は、無料コンテンツと引き替えに個人情報を提供する場合は注意が必要だと強調。ユーザーが本来受けられるべき恩恵を享受できないだけでなく、企業による広範なユーザーデータ収集は、それら企業と協力する、あるいは協力を強制する政府のオンライン監視強化を許してしまうと説明。個人情報の誤った使用は表現の自由に対する萎縮効果を生み出す警告している。