理化学研究所と東芝、NEC、富士通の3社は2017年3月10日、人工知能(AI)の研究開発における連携センターを同年4月1日にそれぞれ開設すると発表した。

写真●左からNEC 執行役員の西原基夫氏、理研 AIP センター長の杉山将氏、東芝 研究開発センター 所長の堀修氏、富士通研究所 取締役の原裕貴氏
写真●左からNEC 執行役員の西原基夫氏、理研 AIP センター長の杉山将氏、東芝 研究開発センター 所長の堀修氏、富士通研究所 取締役の原裕貴氏
[画像のクリックで拡大表示]

 各社が10~数十人規模の研究員を派遣し、人件費を含めて5年間でそれぞれ数十億円を投資。深層学習など既存の機械学習を超える新たなAIアルゴリズムの基礎研究と、アルゴリズムの産業応用を並行して進める。

 理研のAI研究拠点である東京・日本橋の革新知能統合研究センター(理研 AIP)内に、それぞれ「理研 AIP-東芝連携センター」、「理研 AIP-NEC連携センター」、「理研 AIP-富士通連携センター」を開設する。

 各連携センターごとに専用の部屋を用意し、各社の技術者が常駐。理研 AIPの研究員と共同で研究を進める。「理研 AIPと各社の技術者が顔を突き合わせことに大きな意味がある」(理研 AIP センター長の杉山将氏)。

 設置期間は5年。理研の研究員が先端の解析アルゴリズムを提供し、企業はそのアルゴリズムを自社保有のデータに適用して応用可能性を探る。理研 AIPが持つGPUスパコン基盤も利用できる。

 3社のセンターの規模とテーマ設定と以下の通り。

●東芝
人員:約30人(うち東芝から25人超を派遣)

投資:人件費込みで年間数億円

1.プラント生産性向上
自律的な分析・最適化によるプラント操業の効率化、真の不良原因の抽出

2.知的生産性向上
熟練者やビッグデータに埋もれた技術の抽出・発見・提示

3.モビリティ自動化・ロボット化
ドローンをはじめとするロボットの安全・効率的な自律行動

●NEC
人員:約20人(うちNECから約10人を派遣)

投資:人件費を含め年間数億円

1.少量の学習データで高精度を実現する学習技術

2.未知状況での意思決定を支援するための学習/AI技術

3.複数AI間の調整に関わる強化学習の理論解析

●富士通
人員:約50人(うち富士通から約25人を派遣)

投資:5年間で7億円を理研に投じる。人件費を含む社内予算は20~30億円

研究テーマ:
1.ロバストな機械学習
限られた少量データでも的確に未来を予測

2.シミュレーション・AI融合
AI活用によるシミュレーションの高速化。未知の環境における高精度推定の実現

3.大規模知識構造化
推論技術に基づく信頼ある知識ベースを構築。複合的な社会的・経済的課題に対するより良い施策立案を目指す