NECと国際連合の世界食糧計画(WFP)は2017年3月9日、パンデミック(感染症の世界的な流行)の際に医療支援物資を配布するための物流管理基盤を構築すると発表した。医薬品や医療器具、防護服などの在庫状況や現場の物資ニーズをリアルタイムに把握し、発生現場まで的確に届けるシステムやネットワークを整える。

パンデミックの現場では医薬品だけでなく医療従事者の防護服も不可欠
パンデミックの現場では医薬品だけでなく医療従事者の防護服も不可欠
(提供:WFP)
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 今回のプロジェクトは、WFPや世界保健機関(WHO)、世界銀行などの国連機関とNECなど民間企業で作る「地球規模感染症対策サプライチェーンネットワーク(PSCネットワーク)」の活動の一環だ。日本政府がPSCネットワークに拠出した100万ドル(約1億1000万円)を利用する。

 WFPの本部があるイタリア・ローマのデータセンターにNECがシステムを構築し、世界各地の有線・無線のネットワークを通じてパンデミック発生地域における医療支援物資の物流を管理できるようにする。2017年夏をめどに、第1フェーズのシステムを完成させる予定だ。

アーサリン・カズンWFP事務局長(左)とNECの遠藤信博代表取締役会長
アーサリン・カズンWFP事務局長(左)とNECの遠藤信博代表取締役会長
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 同日、WFPのアーサリン・カズン事務局長とNECの遠藤信博代表取締役会長が共同会見を開催。カズン事務局長は「2014年に西アフリカでエボラ出血熱が発生した際は官民の連携が弱く物流も非効率で世界規模の流行を許してしまった。(パンデミックを抑える)成功の鍵は、医薬品の供給確保と迅速な配布にある」と述べ、取り組みの重要性を強調した。NECの遠藤会長は「当初は物流の見える化から始め、データを集めたうえで人工知能(AI)を使った最適化を図る。小売業向けで蓄積してきた最適化のノウハウを生かせる」と意気込みを語った。