クボタの飯田聡取締役専務執行役員 研究開発本部長は2017年3月9日、日経BP社主催の「Cloud Days/ビッグデータ EXPO/セキュリティ/モバイル&ウエアラブル/IoT Japan/ワークスタイル変革/FACTORY/デジタルマーケティング」で講演した。テーマは「クボタのスマート農業戦略」。クラウドやIoT(インターネット・オブ・シングズ)といったITとビッグデータを活用して農家の生産性向上を支援。所得を倍にする「儲かる農業」の実現を目指すと力説した。

クボタの飯田聡取締役専務執行役員 研究開発本部長
クボタの飯田聡取締役専務執行役員 研究開発本部長
(撮影:皆木優子)
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 同社のスマート農業戦略を支えるのが「クボタ スマート アグリシステム(KSAS)」だ。顧客である農家が収穫結果や作業記録を管理する営農支援システムと、クボタがインターネット経由で集めた農機の稼働状況を管理する機械サービスシステムから成る。

 クボタはコンバインにセンサーを取り付け、刈り取った稲もみの成分や水分量を即座に分析。「収穫直後に、今日刈り取りを終えた田んぼの状況が分かる。収量はもちろん、良い食味のコメが取れる田んぼかどうかを、即座に把握できる」(飯田取締役)。

「KSAS」の構成
「KSAS」の構成
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 どんな効果が期待できるのか。田んぼの「性格」をデータで把握することで、肥料の配合や量を計画し、「土壌をどのように改善すべきかを計画できる」(同)。集めたデータはKSASクラウドで管理。田んぼを耕す時期に同データをトラクターに配信することで、「アルバイトの作業者でも間違いなく施肥できるようになる」(同)。同社がテストしたところ、収量が15%アップしたという。

無人・自動運転のトラクターで超省力化

 スマート農業戦略を支えるもう一つの要素が、IoT技術を使った無人・自動運転の農機だ。センサーとGPS(全地球測位システム)で位置をリアルタイムに制御し、決められた範囲の農場を一定の順序で走行。昼夜を問わず、正確に耕したり収穫したりできるようにする。

オートステア技術の主な開発内容
オートステア技術の主な開発内容
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 現在、同社が開発を進めているのが、運転者が手放しでも自動的にハンドルを操作する「オートステア」技術と、有人監視の下での自動運転技術だ。同社は2016年秋、オートステア技術を搭載し直進を保つ性能を備えた田植機を発売した。

 田植えのシーズンは4~6月に集中するので農家はアルバイトを雇うことが多い。しかし「なかなか熟練させるのが難しく、作業効率を高めにくい」(飯田取締役)。オートステア技術を搭載した田植機なら、「初心者でも短期のトレーニングで、高精度の田植えができる」(同)。同社が検証したところ、100メートルの直進で誤差を10センチメートルに抑えることができたという。将来的には完全な無人による自動運転農機の実現を目指す。

 データ農業を支援するKSASと、超省力化を支援するIoT農機。これらを「単独ではなく、連携・併用しながら進化させ、将来のスマート農業を形成する」(飯田取締役)。