ドローンベンダーのDJI JAPANは2017年3月8日、農薬散布作業に特化したドローン「DJI AGRAS MG-1」のデモンストレーションを実施した(写真1)。MG-1は同社が3月1日に販売を開始した製品で、デモンストレーションには同社の1次代理店のほか、最終顧客である農業従事者が招待されていた。

写真1●DJI JAPANの農薬散布用ドローン「DJI AGRAS MG-1」
写真1●DJI JAPANの農薬散布用ドローン「DJI AGRAS MG-1」
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 MG-1は、本体中央部に農薬を充填するためのポリタンクを備える。ポリタンクからは2組のポンプを使って農薬を吸い上げ、プロペラ部に実装した4つのノズルから下方向へ噴射する仕組みになっている(写真2)。ポリタンクには最大10kgの農薬を補充できる。バッテリー駆動時間は最大10分。同社は、1度の飛行で最大1ヘクタール(1万平方メートル)のエリアに散布可能だとしている。

写真2●農薬を噴射するノズルはプロペラ部分に実装されている
写真2●農薬を噴射するノズルはプロペラ部分に実装されている
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 これまでドローンで農薬を散布するときは、操縦者がドローンを停止させたいと思っていたポイントからずれて、停止してしまうことがあった。原因は、農薬が液体であることにある。ドローンが停止しようとすると、ポリタンク内の農薬が進行方向に偏ってしまい、ドローンの機体も流されてしまうからだ。

 この課題を解決するため、DJI JAPANは農薬散布の用途を想定した専用のフライトコントローラー「A3-AG」を新たに開発し、MG-1に実装している。ポリタンク内の液体の動きをあらかじめ考慮して制御する仕組みになっていて、操縦者が意図したポイントで停止できるようにした(動画)。

 ほかにも農薬散布の用途を想定した様々な機能を持っている。その1つが、ポリタンクの前後と底の3カ所にミリ波レーダーを実装していること(写真3)。作物から一定の距離を保って飛行することが可能になり、農薬をエリア全体で均等に散布できるようした。持ち運びしやすいように、プロペラとアームが折りたたみ式になっている。飛行するときのサイズは1.5メートルほどだが、折りたたむと2分の1ほどに小さくできる。

写真3●ポリタンクの前面に装着された黒い四角の装置がミリ波レーダー
写真3●ポリタンクの前面に装着された黒い四角の装置がミリ波レーダー
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 現在、農薬散布では無人ヘリコプターが広く普及している。ただし、無人ヘリコプターは操縦が難しく、機体も1機で1000万円を超えるほど高価。このため、農家は無人ヘリコプターを操縦できる専門業者に依頼して農薬を散布していた。

 ドローンであるMG-1であれば、初心者でも5日間、経験者であれば3日間の講習を受ければ、農薬散布に必要なライセンスを取得できる。価格も180万円前後で、無人ヘリコプターに比べて導入コストを大幅に抑えられる。農家が自らドローンを所有し、活用できるようになる。

 農業でのドローンの活用を支援するため、DJI JAPANは4月末までに全国30カ所で教習所を整備する計画だ。教習所は同社の1次代理店が運営する。一般社団法人農林水産航空協会の認定を受けるため、5日間または3日間の教育プログラムを修了すると、ドローンを使った農薬散布に不可欠な操縦者認定資格も取得できる。