マルケトとパートナー11社は2017年3月8日、日本のBtoB企業向けにAccount-Based Marketing(ABM)アプリケーション「Marketo Account-Based Marketing(以降、Marketo ABM)」の本格提供を開始したことを発表した。

左からユーザベースの佐久間 衡氏、東京商工リサーチの弓削 正範氏、マルケトの福田 康隆氏、アクセンチュアの槇 隆広氏、マルケトの鈴木 仁氏
左からユーザベースの佐久間 衡氏、東京商工リサーチの弓削 正範氏、マルケトの福田 康隆氏、アクセンチュアの槇 隆広氏、マルケトの鈴木 仁氏
(撮影:松本 敏明)
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日本での本格リリースのタイミング

 マルケトが考えるABMとは、BtoB企業のマーケティング部門と営業部門が協働し、重点顧客からの収益最大化を目指す戦略的アプローチを指す。Marketo ABMは、「ターゲット」「エンゲージメント」「効果の可視化・分析」の3ステップを運用できるプラットフォームを提供する。

 米マルケトがMarketo ABMをグローバルでリリースしたのは、2016年9月。日本企業向けのABMソリューション提供が半年遅れとなった背景を、マルケト日本法人代表取締役社長の福田康隆氏は、「企業がABMに取り組むスタートラインとしてはターゲットの選定が最も重要。しかし、米国と日本ではそのための環境に大きなギャップがある。そのギャップを埋めるための準備に時間を要した」と説明した。

ABM導入環境における日米のギャップ

 福田氏は、その日米のギャップについての説明を「データ」と「組織の協力関係」の視点から続けた。

 ABMでは、企業経営の視点から狙うべきターゲットか否かを判断しなくてはならない。その際には売り上げや利益、顧客獲得単価、リテンション、商談期間など様々な要素を組み合わせてターゲットを決める必要がある。

 大前提は、SFA(営業支援システム)をはじめとする基幹システムの中にある「過去の取り引きデータ」との連携ができること。さらに市場データ、Webのクローリングから得たデータなど、様々なデータを基にアカウントのスコアを付与したり、類似企業のリストを提供したりといったサードパーティーのデータソリューションの活用も不可欠である。

 「特に日米でギャップが大きいのはこのデータソリューションの分野」と福田氏は指摘する。マルケトが日本企業向けにABMアプリケーションを提供する以上、形だけの取り組みに終わらせることを避けたいと考えた。そのためには、日本のBtoB企業が必要とするソリューションを提供できるソリューションパートナーの協力が必要であったという。

ABM成功の鍵は、プロセスの分業ではなく共有

 「ABMでは、マーケティングと営業をどう連携するかという観点で語られることが多いが、それ以上にファイナンスやカスタマーサポートとの連携も重要」と福田氏は語る。例えば、あまり大きな取引金額ではないのに、サポート負担が大きいという特徴がある顧客にどう対応するかという問題には、組織の壁を越えた全社的な対応が必要になるとする。組織や人材・スキル、プロセス、システムの全社的な変革を支えるサービスパートナーが必要と考えたのはそのためだ。

 福田氏は、「マーケティングと営業の間のつなぎではなく、企業としてどこに経営リソースを集中的に投下するべきかを正しく判断することが今後ますます重要になる。これは経営層の仕事であり、部門間の融和の話だけでは早晩行き詰まる。マーケティングから営業への一連のプロセスは実際には前後することも多い。分業ではなくてプロセスを共有するという発想も必要になる」と見解を述べた。