三越伊勢丹ホールディングスは2017年3月7日、大西洋代表取締役社長執行役員が退任し、4月1日に杉江俊彦取締役専務執行役員 経営戦略本部長が社長に就任することを発表した。杉江氏は1983年に慶応義塾大学法学部卒業後、伊勢丹に入社。2009年4月に執行役員 営業本部MD統括部食品統括部長 兼 食品営業部長に着任。以降、三越伊勢丹 執行役員 営業本部MD統括部食品統括部長、三越伊勢丹ホールディングス 常務執行役員経営戦略本部長などを歴任している。

社長に就任する杉江俊彦取締役専務執行役員 経営戦略本部長(写真:村田 和聡)
社長に就任する杉江俊彦取締役専務執行役員 経営戦略本部長(写真:村田 和聡)
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 杉江氏はCIO相当職も経験し、同社のIT活用をけん引した実績を持つ。1990年代半ばには、故・武藤信一伊勢丹社長(後に三越伊勢丹ホールディングス初代社長に就任)の下、「MD(マーチャンダイジング)業務改革」に取り組み、新MDシステムの導入を手掛けた。JANコードなど業界標準の商品コード体系が無いファッション商品では難しいとされてきた単品管理を導入し、リアルタイムで在庫を管理する当時としては極めて先進的なシステムだ。

 1995年の導入当初は現場が大混乱し、「こんなシステムは必要ない」という厳しい声を浴びせられたこともある。成功事例の横展開や教育研修の徹底、問い合わせ窓口の整備により現場に浸透させた。4億4000万件に上る商品情報データと5億7000万件の顧客商品分析データをTeradata Database上で分析し、日々8000人の社内ユーザーが活用する世界の小売業でも有数の情報インフラとなった(いずれも2014年末の実績値)。

 2013年からは富士通などと、IoTを活用した販売員の行動解析にも着手。スマートフォンのGPS機能を使って販売員の位置情報を記録し、接客行動と併せて分析することで優秀な販売員の行動特性を解析した。伊勢丹新宿本館の靴売り場の生産性向上に寄与するなど様々な効果を生み出している。

 百貨店事業の業績が悪化し、不採算店の閉鎖を進める一方で、シニア向け旅行会社を買収するなど、「モノからコト」への転換を進める三越伊勢丹HD。「IT巧者」の新社長が打ち出す戦略に注目が集まる。