クラウドからワークスタイル変革に至るICTの最新トレンドが一目で分かる専門展「Cloud Days/ビッグデータ EXPO/セキュリティ/モバイル&ウエアラブル/IoT Japan/ワークスタイル変革/FACTORY」(主催:日経BP社)が2017年3月2日、大阪・うめきたのグランフロント大阪・ナレッジキャピタルで開幕した。13時からのキーノートスピーチには、竹中工務店 グループICT推進室 システム企画・整備1グループ長の森 康久 氏が登壇し、同社のワークスタイル変革の取り組みを紹介した。

竹中工務店 グループICT推進室 システム企画・整備1グループ長の森 康久 氏(写真撮影:直江 竜也)
竹中工務店 グループICT推進室 システム企画・整備1グループ長の森 康久 氏(写真撮影:直江 竜也)
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 同社は「竹中スマートワーク」の旗頭を掲げ、2014年4月からiPadを計7000台導入。モバイルを活用した生産性向上に取り組んでいる。当時の建設業は技能労働者の不足が深刻化しており、生産性の向上が不可避となっていた。「どこからでも必要な情報・ナレッジを引き出し、スピーディかつ効果的に業務を進めることで生産性を向上させ、お客様満足と品質向上の価値を創出しようと考えた」(森氏)。

 2014年4月から3年にかけて、業務のやり方から変えていった。併せてインフラ整備やセキュリティ対策にも取り組んだ。インターネット/イントラネットやOfficeソフトにアクセスする際は、特定の「関所」を必ず通過するようにして、認証をかけるとともにログを取得するようにした。「利便性とセキュリティの折り合いをどうつけるかで苦労した」(森氏)。

 利用を促進するため、職能別に活用メニューを用意した。例えば、作業所向けのメニュー「竹中スマートサイト」では、図面や技術資料を現場で確認するツールなどをセットにした。

端末を配っただけでは浸透しない

 800ほどある作業所への保守サポートも課題だった。関連会社が現地に出向いて説明会を開くとともに、導入の狙いを説明して回った。このほか推進担当者を100人ほど任命して利用促進に努めた。専用のホームページを立ち上げるなどして、上手に活用している事例の横展開も進めた。ログを分析して利用度を定量的に測定し、目標値に向けてPDCAサイクルを回した。「端末を配っただけでは、使えない人が出てきてしまう」(森氏)。

 こうした取り組みを地道に続けた結果、竹中工務店は生産性を大きく向上させた。例えば、作業所では図面や技術資料のペーパーレス化が進み、膨大な紙の資料を持ち歩く必要がなくなった。図面や技術資料はクラウド上に保管し、「CheX(チェクロス)」というソフトで閲覧する。「必要な図面は現場でいつでもスピーディに参照できるようになった」(森氏)。ウエアラブルカメラを使って監視ポイントを可視化するなど、現場発の生産性向上策も出てくるようになった。

 「この3年間でモバイル活用はほぼ定着した」と森氏は話す。同社は今後も生産性の向上に向けて竹中スマートワークをさらに進化させる方針だ。「次の3年間でペーパーレスによる情報活用を徹底すると共に、コミュニケーションの密度向上やナレッジ共有の促進を進めていく」(森氏)という。タブレットPCやウエアラブル端末の活用も視野に入れる。