日本放送協会(NHK)は2017年2月26日から同28日にわたり、「第46回目NHK番組技術展」を開催している。全国に放送局を持つNHKの放送現場で開発された放送機器や、番組制作や緊急報道に関する技術的な取り組みを一同に集め、来場者に紹介している。

 例えばスーパーハイビジョン(4K・8K)の分野では、NHK 技術局とNHK放送技術研究所が共同で、8Kカメラや8Kモニターの小型化の成果を展示した。8Kカメラは従来よりも軽量な約1.5kgで、現用機である従来のカメラと並べると小型化されている点が確認できた(写真1)。説明員は、「現用機も2年前に作ったものでそれほど古いものではないが、技術の進展が早く小型化が進んでいる」と説明した。カメラと一体型の収録部では専用のSSDで約60分の収録が可能という。

写真1●手前が8K小型カメラ。奥の現用機に比べ小型化を実現した。
写真1●手前が8K小型カメラ。奥の現用機に比べ小型化を実現した。
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 8K小型モニターとしては、17.3インチの液晶モニターを公開した(写真2)。低温ポリシリコン(LTPS)技術を採用し、8K画素で500ppi超の高精細画質を有する8K液晶モニターを採用し、世界で初めて17.3インチの8K小型液晶モニターを開発したという。

写真2●8K小型液晶モニター
写真2●8K小型液晶モニター
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 NHK 放送技術局 制作技術センターは、4K・8Kの撮影現場で精細なフォーカシングを可能にするために開発したフォーカスリモート装置を展示した。リモート側の操作装置を使ってBluetooth経由でカメラ側のレンズモーターを駆動させてフォーカスを行う仕組みである(写真3)。繊細な操作が必要とされる4K・8Kの撮影現場の経験に裏打ちされたデータを活用し、質の高いフォーカスリモート操作を実現したとしている。既に撮影現場で利用しており、「例えば2017年1月にはこの装置を使って古代遺跡を撮影した」(説明員)という。

写真3●4K・8Kレンズ対応のフォーカスリモート装置
写真3●4K・8Kレンズ対応のフォーカスリモート装置
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 スポーツ中継の分野では、例えば中継映像から選手の速度や歩幅などのデータを解析して出力する技術である「データライブ解析」を展示した。この展示は、仙台放送局と2020東京オリンピック・パラリンピック実施本部、技術局が共同で行っている。

 今回のデータライブ解析は、「カメラの撮影方向」や「ズーム」といったカメラ情報のないスポーツ中継映像であっても、カメラ情報を推定し、選手のデータのライブ解析ができる点が特徴である。2016年のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックの陸上競技(100m走)の中継映像から選手の速度や加速度、歩幅などの自動解析を実現しており、会場では解析結果を表示するデモを行っている。

 緊急報道の分野の展示としては、札幌放送局が「緊急報道サポートナビ」のデモを行った。緊急報道のために、報道担当者が車両でいち早く現場に駆けつけられるようにするための現場サポートシステムである(写真4)。Google MapやGoogle Earthと連携し、車両の現在位置や現場到着までの所要時間、渋滞情報、過去の中継実績や伝送実績を閲覧できる。イントラネット経由でブラウザで確認できるため、ノートパソコンがあれば利用できるという。既に緊急報道サポートナビの利用を開始しており、例えば2016年8月の北海道台風情報の緊急報道で活用した。

写真4●緊急報道サポートナビ
写真4●緊急報道サポートナビ
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