2017年2月25日、米シンギュラリティ大学が開催するオーディション「ジャパン グローバルインパクトチャレンジ」の決勝イベントが行われた。

 同コンテストは、貧困や環境問題といった地球規模の社会的課題に対して、AIやロボティクスなどの最先端技術を用いたソリューションアイデアを競うもの。日本以外にも、米国、南米、欧州、アジアなど全世界38カ国で開催されている。選抜されたアイデアの提案者は、実現に向けて、同大学のイノベーション促進プログラム「グローバル・ソリューション・プログラム」に無償で参加できる。

 25日に開催された決勝イベントでは、メンタルヘルスやエネルギー、食糧問題など幅広い領域のソリューションアイデアを持つ6人が登壇し、アイデアを披露した。優勝したのは、培養肉を開発する「Shojinmeat Project」の羽生雄毅氏だった(写真1)。培養肉の低価格化のほか、誰でも培養肉を作ることができるキットの開発にも取り組んでいる。

写真1●2017年2月25日に開催された、米シンギュラリティ大学の「ジャパン グローバルインパクトチャレンジ」の登壇者および関係者
写真1●2017年2月25日に開催された、米シンギュラリティ大学の「ジャパン グローバルインパクトチャレンジ」の登壇者および関係者
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 このほか、以下の5アイデア(カッコ内は発表者)が発表された。

  • Challenergy(清水敦史氏):マグナス効果を活用した垂直軸型タービンによる風力発電の開発
  • GAME PROJECT(清水あやこ氏):ゲームを通じたメンタルコントロールの開発
  • Open Cradle(渡邉峰生氏):科学コミュニティと産業、親を結ぶことで幼児向け早期教育の水準を高めるプログラムの開発
  • GROW(須藤潤氏):食料の移送コストの低減を目指す、持ち運び可能な超小型農園「Nano Farm」の開発
  • GITAI(中ノ瀬翔氏):操作者の動作と同期するテレプレゼンス・ロボットの開発

 このほか25日のイベントには、以下の3人が登壇し、講演した。

 シンギュラリティ大学のスタートアップソリューションのVPを務めるPascal Finette氏は「指数関数的にコンピュータの能力が進化する時代には、直感的な感覚が役に立たなくなる」と語った。

 ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長の北野宏明氏は、同氏が手がける「ロボカップ」「持続可能な生活アーキテクチャ」「ノーベル賞を獲得する人工知能」を紹介しながら、大きな課題の解決に向けて継続的な活動を続けるための要諦について解説した。

 大阪大学 特別教授の石黒浩氏は、「人を知るためのロボット開発」というユニークな研究開発を推進する立場から、10年後、100年後、1000年後の未来社会を展望した。石黒氏によれば、100年後には、技術を使える人と使えない人の能力差が広がり、極端な2極化が進むという。ただ1000年先という超長期的には、脳活動がコンピュータに移植され、人間の存在は無機物的になるかもしれず、そうなると2極化した能力差は再び縮まるのではないか、との展望を示した。