KDDIは2017年2月24日、ドローン本体に小型の基地局を搭載した「ドローン基地局」を、全国10カ所の保守拠点に配備すると発表した(写真1)。自然災害が発生したとき、被災エリアで一時的な携帯電話サービスを提供するために活用する。陸や海、河川などからアクセス不能になったエリアでのサービス提供を可能にする。3月から順次、配備していく。

写真1●「ドローン基地局」の試作機
写真1●「ドローン基地局」の試作機
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 KDDIはこれまで、車両型基地局や船舶型基地局を活用して、自然災害などで被災したエリアの通信サービスを一時的に復旧してきた。ドローン基地局は、被災エリアへの陸路や航路が遮断されてしまい、車両型基地局や船舶型基地局を配備できないケースで活用していく。同社は同日、東京臨海広域防災公園で実施した「大規模災害を想定した復旧模擬訓練」で、ドローン基地局を使った訓練を実施した(写真2)。

写真2●KDDIが東京臨海広域防災公園で実施した「大規模災害を想定した復旧模擬訓練」の様子
写真2●KDDIが東京臨海広域防災公園で実施した「大規模災害を想定した復旧模擬訓練」の様子
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 訓練は、大規模地震が発生して伊豆大島の通信サービスが利用不能になったことを想定して実施された。本州から離れているため陸路ではアクセスできず、航路もアクセスには時間がかかる。そこで、KDDIの保守担当者がヘリコプターで現地に駆けつけて、ドローン基地局を使って通信サービスを復旧させるシナリオで訓練が進められた(写真3)。

写真3●KDDIの保守担当者がヘリコプターを使って駆けつけた
写真3●KDDIの保守担当者がヘリコプターを使って駆けつけた
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 ヘリコプターで現地に入ったKDDIの保守担当者は、一緒に持ち込んだ可搬型の通信衛星用の基地局を使って、緊急の基地局を設置した(写真4)。この可搬型の基地局は、通信衛星を自動的に追尾する機能を持つ。KDDIが新たに開発したもので、設置する際にアンテナの向きなどを微調整する手間を省き、短時間に設置できるようになっている。

写真4●訓練で可搬型の通信衛星用の基地局を設置する保守担当者
写真4●訓練で可搬型の通信衛星用の基地局を設置する保守担当者
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 緊急の基地局を設置できたら、次にドローン基地局を飛ばす(写真5)。被災エリアの人々がスマホからインターネットにアクセスしようとすると、その通信がドローン基地局を経由して、先ほど設置した通信衛星用の基地局につながり、そこから衛星回線を経由してインターネットにつながる仕組みだ。ドローン基地局と衛星通信用の基地局の間は、無線LANで接続している。

写真5●訓練でドローン基地局を飛ばす保守担当者
写真5●訓練でドローン基地局を飛ばす保守担当者
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 KDDIは、以前より自然災害などの被害状況を把握するためにドローンを活用していた。カメラを搭載したドローンを現地で飛ばし、上空から撮影した映像をモニターで確認する使い方である。こうした背景もあって、既にドローンのパイロットを育成するプログラムを自社で整備している。現時点で、40人ほどの保守担当者がドローンを操縦できるという。

 KDDIがドローン基地局の開発を検討し始めたのは2015年7月。翌年の7月に試作機の開発に着手し、同年12月に完成した。今年の1月に屋久島で最初の実証実験を実施。上空150mの位置にドローン基地局を配備し、半径1kmで携帯電話サービスを提供できることを確認した。