日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は2017年2月23日、東証一部上場企業とそれに準ずる企業を対象に実施した「企業IT動向調査2017」の、「ビジネスのデジタル化」に関する速報値を発表した。ビジネスのデジタル化とは、AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)など、ITにより競争優位性の高いサービスやビジネスモデルを実現することを指す。今回調査から設問に追加した。既に全体の4割が、ビジネスのデジタル化について実施または検討していることが明らかになったという。

 回答企業全体で見ると、ビジネスのデジタル化を「実施している」と答えたのが12.5%、「検討中」が26.7%だった(図1)。取り組みは売上高が大きい企業ほど進んでおり、売上高1兆円以上の企業では「実施している」が48.0%、「検討中」が42.3%と、合計で9割を超えた。売上高1000億~1兆円未満の企業でも、「実施している」は20.2%、「検討中」は42.8%で、「関心なし」と回答した企業は4.8%にとどまった。「もはやビジネスのデジタル化が無視できないキーワードになっている」(JUAS)という。

図1●ビジネスのデジタル化の検討状況(売上高別)
図1●ビジネスのデジタル化の検討状況(売上高別)
(出所:日本情報システム・ユーザー協会)
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 業種別に見ると、最も進展しているのは「金融」(図2)。AI、FinTechなどの分野で取り組みが行われており、既に1割超の企業が、ビジネスのデジタル化によって何らかの成果を上げていることが分かった。

図2●ビジネスのデジタル化の検討状況(業種グループ別)
図2●ビジネスのデジタル化の検討状況(業種グループ別)
(出所:日本情報システム・ユーザー協会)
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 次に取り組みが盛んなのが「機械器具製造」業界で、特にIoTへの期待が高い。代表例が「製造機器の情報収集と分析」「ウェアラブルによる保守作業の高度化と効率化」「工場内での人の動きの分析と効率化」などという。ただし、既に成果が出ていると回答した企業は3.4%と全業種中で最も少なく、JUASは「この分野ではまだ成果を実感できる企業は少なく、道半ば」と分析する。

 調査では、ビジネスのデジタル化の推進組織についても質問。「IT部門と事業部門の共同チーム中心(組織化はされていない)」と回答した企業が最も多く、52.9%に上った(図3)。「金融」「商社・流通」などの業種では、デジタル化の専門組織を設置する動きも見えるという。

図3●ビジネスのデジタル化の中心組織(業種グループ別)
図3●ビジネスのデジタル化の中心組織(業種グループ別)
(出所:日本情報システム・ユーザー協会)
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 同調査では、4000社のIT部門長に調査票を郵送。有効回答社数は1071社だった(設問によって有効回答数は異なる)。正式なデータや分析結果は、2017年4月上旬に発表予定。

JUASの発表資料