NECは2017年2月20日、NTTドコモと共同で、5G(第5世代)携帯電話の要素技術の一つで、多数のアンテナを使って通信する「Massive MIMO」の検証実験を、神奈川県横須賀市と東京都渋谷区で実施したと発表した。実験では、NECが開発した低SHF帯の超多素子AAS(アクティブ・アンテナ・システム)を使った。

検証実験で使った低SHF帯超多素子AASの外観
検証実験で使った低SHF帯超多素子AASの外観
(出所:NEC)
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検証実験で使った低SHF帯超多素子AASの外観
検証実験で使った低SHF帯超多素子AASの外観
(出所:NEC)
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 実験の結果として、多素子アンテナを使ってスマートフォンやタブレットなどの端末がある方向に適切に信号(ビーム)を向けることによって、大容量化や通信品質の向上が可能であることを検証した。さらに、屋内ではLTEに対して約8倍の周波数利用効率を安定して実現できることを確認した。

 背景には、近接する複数の端末と基地局が同時に通信するために、それぞれの端末に対してビームを形成すると、互いの信号が干渉し合い通信品質が低下するという状況がある。また、柱やビルなどの障害物によって発生する信号の反射や回り込みといった、直接波以外の信号(マルチパス)を活用した大容量化が困難という状況がある。

 実験で使ったNECの超多素子AASは、端末にビームを向けるビームフォーミングの制御を高めているという。例えば、対象端末に対してのビームを形成するとともに、干渉する信号を打ち消すビームをマルチパスを使って形成する。複数の端末が近接している場合でも、高い通信品質を維持したまま同時に複数の端末と通信できるとしている。

 高い周波数帯の中でも、特に低SHF帯(3GHz~6GHz)は2020年頃の商用化が見込まれているため、NECは早期実用化に向けて積極的に取り組んでいるという。