政府は2017年2月14日、「働き方改革実現会議」の第7回を開催し、残業時間に関する上限規制案を提示した。同案は、労働基準法を改正して月45時間、かつ年360時間という上限を法律で規定するというもの。臨時的な事情に対応するために労使が協定を結ぶ場合でも、年間720時間(月平均60時間)を上限にする。同案に沿って労働基準法が改正され、施行された場合、IT企業の職場にも大きな影響が及びそうだ。

 現状の労働基準法においては、労使が協定(いわゆる36協定)を結べば、事実上無制限に残業を増やせるようになっている。厚生労働大臣告示では月45時間以内、年間360時間以内という限度基準が出ているものの、強制力がないためだ。今回の政府案は、法律に残業時間の条件を具体的に規定することで強制力を持たせる。

 一部報道で出ていた、「繁忙期には月間100時間までの残業を認める」「前後の月との平均で80時間まで認める」といった特例は、今回の政府案に盛り込まれなかった。代わりに、「一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限を設ける」と具体的な時間を提示しない特例が盛り込まれている。

720時間超の協定結ぶIT企業が2割

 政府案に沿って労働基準法が改正された場合、IT企業にも大きな影響を及ぼしそうだ。例えば、厚生労働省労働政策局が2016年10月までに実施した調査を参考にすると、IT企業の約2割は法律違反になってしまう可能性が高い。36協定で取り決めた残業時間が720時間を上回っているためだ。

 厚生労働省の調査は、2016年3月に全国の労働基準監督署に届け出られた労使協定のうち、1カ月当たり45時間を超える残業時間で締結しているものからサンプルを抽出し、残業時間を集計したもの。同調査において、IT企業が含まれる「通信業」では、年間800時間超の残業を認める協定を届け出ている割合が約20%を占めた。実際に800時間近い残業をしているかどうかにかかわらず、これらの企業は法律違反となる。早急な見直しを迫られる。