2017年2月10日、経済産業省主催のイノベーター育成プログラム「始動 Next Innovator 2016」の成果報告会が開催された。同プログラムには232人が応募し、そのなかから126人の事業計画が採択され、数カ月合計12日間の日本国内プログラムを経て、さらに選抜された20人が2017年1月にシリコンバレー、10人がイスラエルにそれぞれ渡り、国外研修を受けていた。

 報告会では、シリコンバレー派遣者のグループが、「TPOに合わせて、時間別のプレゼン内容を用意しておくことが必要」「AIやディープラーニングの圧倒的なパワーを感じた」「失敗を恐れず、とにかく行動」「大企業のイノベーションの起こし方では、異文化を取り込むことや顧客視点を持つことが重要」など、現地での研修を通じて学んだことを紹介した(写真1)。

写真1●現地での研修を通じて学んだことを紹介
写真1●現地での研修を通じて学んだことを紹介
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 国内外の研修やメンタリングを踏まえ、研修生のうち以下の7人が自らの事業案のピッチに臨んだ。

  • 植松正太郎氏(G-TAC):ゲノム・パーソナル医療のプラットフォーム
  • 梅田実氏(朝日新聞社):定年後の再就職やスキル取得を図るシニア人材育成・交流ネットワーク「さくらカレッジ」
  • 木村優紀子氏(スナップマート):スマートフォンの写真を商用利用可能にした写真販売サイト
  • 土井寛之氏(SPLYZA):アマチュアスポーツにおける動画活用の促進を図る「SPOCH」
  • 西垣孝行氏:医療・介護機器のUX(ユーザー体験)改善を図る、メディカルUXデザイン開発「Medicasy Design Lab」
  • 島津敦好氏(カウリス):不正アクセス対策として「本人らしさ」を自動的に検知するセキュリティ・プラットフォーム
  • 竹上慶氏(NTT):観光客向けや災害時に、適切な言語による情報を送り届けるための多言語のサイネージ一斉情報配信サービス

 土井氏は、シリコンバレーでの研修の結果、「現地の起業家から、発想のスケールの大きさを学んだ」として、さっそく新しい機能の実装に取り組んでいるとした。

 今回の報告会には、ライフネット生命保険代表取締役社長の岩瀬大輔氏が登壇、新興企業として70年ぶりに生命保険業に参入した同社および自身の起業プロセスを振り返りつつ、「起業家は愚痴を言わない。なぜなら自分で状況を変えられると思っているから」「投資家は人に投資する。極端な話、ビジネスプランは何でもいい」「人生は1度きりなので、エッジの効いた生き方を」「アクティブに動き回っていると、すべての行動がつながってくる。そうした”計画された偶然性”を活かしてほしい」といった言葉を参加者に贈った(写真2)。

写真2●ライフネット生命保険代表取締役社長の岩瀬大輔氏
写真2●ライフネット生命保険代表取締役社長の岩瀬大輔氏
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 主催者の経済産業省からは経済産業政策局審議官を務める中石斉孝氏が登壇。「日本のイノベーションは、国際ランキングで順位を落とすなど危機的な状況だ。参加した人たちには、イノベーションの停滞を引き起こしている既存の枠組みを破ってほしい」とした。

 さらに同局の産業資金課長兼新規産業室長の福本拓也氏は「国外派遣については『シリコンバレーの様子は文献を読めば済むのではないか』などの批判はあるが、それぞれがビジネスプランを携えて研修に臨んだことが圧倒的に違う。ぜひ実現して、周囲に影響を与えてほしい」とし、今後の活動に期待していると語って報告会を締めくくった。