高速バス大手のWILLER EXPRESS JAPANは2018年2月7日、IoT(インターネット・オブ・シングズ)を活用した乗務員の健康管理に関する方針の説明会を開催した。平山幸司代表取締役は「疲れや眠気を検知するIoT機器を1年半ほど運用し、車両損傷による損失金額が従来の74%減になるなど、事故削減に目覚ましい効果が出ている」と述べた。
WILLER EXPRESS JAPANは2016年夏ごろからバス運転手全員に富士通のウエアラブルセンサー「フィーリズム(FEELythm)」を着用させている。取得したデータはLTE回線経由でクラウド環境に集約する。
センサーで眠気を検知したらバイブレーション機能で本人に注意喚起したり、運行管理拠点から本人に連絡して休憩を促したりする。これが注意不足・漫然運転による事故の抑止に貢献しているという。
平山代表取締役は「今後は、脳疾患に起因する突然の運転不能を未然に防ぐ取り組みを強化したい」と述べた。脳疾患では運転手が短時間で意識不明に至ることが少なくなく、衝突や転落などの重大事故につながりやすい。
脳疾患の予防については、IoT活用以外にも、さまざまな施策を並行して実施する。まず、脳ドックを專門とするメディカルチェックスタジオ東京銀座クリニックと協業。脳ドックで疾患を未然に発見する取り組みを強化する。
知久正明院長は「バスはトラックなど他の業種に比べ、人命を預かる緊張感や分刻みのスケジュールなど運転手のストレス要因が多く、脳疾患を誘発しやすい。早期発見して適切な措置を取ることが重要だ」と述べた。
2017年12月に本格稼働した東京・新木場の新拠点も重要な役割を担う。バス80台分の車庫スペースに加え、敷地内に防音性を高める施工をした80室の運転手向け宿泊棟を備える。
宿泊棟1階には、朝・昼・夜に利用できる社員食堂を備え、500キロカロリー前後の低カロリーメニューを中心に提供する。
WILLER EXPRESS JAPANの飯島徹管理本部長は「従来は運転手向け宿舎が車庫周辺のホテルなどに分散していた。ホテルへの往復時間分の睡眠時間が削られるうえ、防音環境もまちまちで、食事も不規則になりがちだった。新拠点で改善を図り、健康起因の事故を撲滅したい」と説明した。