情報処理推進機構 ソフトウェア高信頼化センター(IPA/SEC)は2017年1月31日、「『上流工程の作業不備に起因した手戻り』の解決を支援する」(IPA/SEC)ためのガイドブックを公開した。システム化計画の立案担当者向けと、システムを発注するユーザー企業向けの2種類を用意。それぞれ約200ページの文書で、IPA/SECのWebページから無償でダウンロードできる。

 システム化計画を立案する際のポイントをまとめた文書が「システム再構築を成功に導くユーザガイド ~ユーザとベンダで共有する再構築のリスクと対策~」。システムの再構築プロジェクトで既存システムが存在することを前提にしている点が特徴だ。アプリケーションのみを変更するのではなく、システム基盤からアプリケーションまでのシステム全体を更改するプロジェクトを対象にしている。

 文書では再構築手法の選択の考え方、現行システムの調査方法、新システムの要求事項のまとめ方、などを解説。各フェーズで作成すべき文書のひな型や検討事項の整理方法などを図表を交えて提示している。IPA/SECは「ユーザー企業は開発企業との合意形成をするうえで、本文書を活用できる」としている。

 要件定義を実施するユーザー企業に向けた文書が「ユーザのための要件定義ガイド~要求を明確にするための勘どころ~」だ。IPA/SECは「要件定義に熟練した有識者がこれまでのプロジェクト経験から、抜け漏れにつながる『ありがちな間違い』を課題として示し、『解決策の勘どころ』について、具体例を挙げて指南している」と説明。

 要件定義を実施する前に考えるべきことや、要求が膨らんだ場合のコントロール方法、業務の見直し方法などを解説している。「新システムの要件を記述した作成ドキュメントに対応するコツを確認しながら作業を行うことで、抜け・漏れのない要件定義を進めることができる」(IPA/SEC)という。いずれの文書にも、文書の作成に携わったITベンダーや情報システム子会社での実例集が付属する。

 IPA/SECは2016年3月に「システム構築上流工程強化部会」を発足し、傘下に「システム化要求ワーキング・グループ」と「モダナイゼーションワーキング・グループ」を置き、ガイドブックの作成を進めていた。今回の2種類のガイドブックはその成果物となる。