富士通は2016年1月31日、2016年4~12月期の連結決算を発表した。売上高は前年同期比6.1%減の3兆2005億円、営業利益は同616億円増の632億円となり、減収増益となった。減収の主な要因を、同社は円高の影響と説明した。LSI事業も減収だった。パソコンや携帯電話事業でコスト削減が進んだほか、ネットワーク商品やサービスが好調に推移して増益を確保した。

 海外市場では円高の影響を受けたほか、欧州向けインフラサービスが売上減となり15.6%の減収となった。国内市場の売上高は前年同期並みの水準という。

 事業別にみると、「テクノロジーソリューション」の「システムプラットフォーム」が好調だった。国内で携帯電話の基地局向けシステムの需要が高まり、前年同期比5.5%増の1252億円の増収だった。欧州のビジネスモデルの構造改革に向けたコスト負担が減ったことで、営業利益は209億円増えた。同社の塚野英博CFO(最高財務責任者)は、「為替の影響を受けて大きく減収したが、ビジネスそのものは堅調だ。欧州の構造改革が終われば期待する成果は出せるだろう」と説明した。

富士通の塚野英博CFO(最高財務責任者)
富士通の塚野英博CFO(最高財務責任者)
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 塚野氏は英国のEU(欧州連合)離脱問題にも触れ、「投資の面では特に影響はなく、投資環境も良い。構造改革の過渡期で(富士通は)欧州でスローダウンしているが、その後はサービスの質を高めてやっていきたい」とした。

 2017年3月期通期の連結業績予想は、10月の半期決算で為替の影響から下方修正していたため、前回からの見直しはなかった。売上高は前年同期比5.0%減の4兆5000億円で、営業利益は同0.5%減の1200億円とした。

 今期の事業別では、携帯電話やパソコンなどの「ユビキタスソリューション」セグメントが好調になる見通しだ。スマートフォンに加えてカーナビをはじめとする車載機器の需要が高まっていることから、同事業の売上高の業績予想を前回予想から300億円上方修正した。一方、調達費用の増加や開発期間の増加など不確定要素があるため、同セグメントの営業利益予想は据え置いた。

 今回の発表会では、パソコン事業の先行きに関して明確な説明はなかった。塚野氏は「年度内には決めたいが時間のかかることだ」と語るにとどめた。同社は2016年10月、中国レノボ・グループと提携に向けた検討を進めていると発表している。