がん専門機関のがん研究会、同研究会の研究組織であるがん研究所、人工知能(AI)を利用した医療向けサービスを提供するFRONTEOヘルスケアは2017年1月31日、「がんプレシジョン医療」の実現に向けた共同研究を始めたと発表した。AIとゲノム(遺伝情報)解析技術を組み合わせて、がん患者一人ひとりに最適なプレシジョンメディスン(精密医療)の提供を目指す。プロジェクトは5年間で、2021年に完了させる計画だ。

左からがん研究会研究本部長・がん研究所所長の野田哲生氏、シカゴ大学医学部教授の中村祐輔氏、FRONTEOヘルスケア社長の池上成朝氏、FRONTEO社長の守本正宏氏、FRONTEO CTOの武田秀樹氏
左からがん研究会研究本部長・がん研究所所長の野田哲生氏、シカゴ大学医学部教授の中村祐輔氏、FRONTEOヘルスケア社長の池上成朝氏、FRONTEO社長の守本正宏氏、FRONTEO CTOの武田秀樹氏
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 共同研究の一環として、AIを使った3種類のシステムを開発する。第一は、診断支援システム。ゲノム解析による検査結果をはじめとする患者の情報、患者に合う治療法に関わる論文や医療情報などを基に、患者に最適な治療法を提案する。

 二つめは、インフォームドコンセント支援システムである。医師が病状や治療方針を十分に説明し、患者の同意を得るインフォームドコンセントを支援するもので、患者の受け答えに応じて最も理解しやすいレベルで状況を説明できるようにする。

 第三は情報支援システム。専門家が論文や医療情報をどのように選択するかを学習させ、その結果を基に医師に必要な記事を自動で選択する。さらに医師向けの記事を患者向けにリライトした記事を用意し、患者に応じて必要な記事を自動で選択できるようにする。

 システムは主にFRONTEOヘルスケアが開発する。FRONTEOのAIエンジン「KIBIT」を使う。KIBITは深層学習(ディープラーニング)手法などと異なり、データが少なくてもAIによる学習や処理が可能なのが特徴。がん研究所はこの点を評価したという。