日本郵政の長門正貢社長は2017年1月30日の定例記者会見で、かんぽ生命保険の基幹システムを更改し、同年1月4日から稼働を始めたと発表した。今回のシステム刷新により、新商品の開発期間短縮や業務効率の向上などが図れる見込みだ。将来は、ビッグデータ解析や人工知能(AI)の活用といった取り組みも視野に入れる。

定例記者会見で新基幹システムの稼働を発表した日本郵政の長門正貢社長
定例記者会見で新基幹システムの稼働を発表した日本郵政の長門正貢社長
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 長門社長は業務面で期待できる効果として、「システム品質の向上」「新商品開発のスピードアップ」「業務効率の向上」の三つを挙げた。一部ではシステム刷新によって、夜間バッチ(夜間にまとまった量のバッチを処理する操作)にかかる時間が1/3に短縮したり、営業日報の作成時間が1時間から5分間に短縮したりといった改善が見られたという。

 コスト面での効果も大きい。基幹システムの刷新には約1200億円の費用をかけたが、ハードウエアの調達コストと8年間の保守費用を計算すると、従来システムと比べて320億円を削減できるという。さらに、ソフトウエアの開発費用は5年間で180億円削減できる見込みだ。

 長門社長は、「インフラとしてのシステムは整った。今後はビジネスモデルへ適用していきたい」と述べ、新システムへの期待を説明した。「顧客からFinTechなど新しいサービスのニーズがあった」(長門社長)といい、将来的にはビッグデータ解析やAIの活用も構想する。例えば、ビッグデータ解析により、個人の健康度合いや生活スタイルに合った掛け金の設定や、健康増進に向けた各種サービスの提供が期待できる。AIの活用では、IBMの「ワトソン」を支払い業務に使うことも計画する。